第93回ル・マン24時間、予選・ハイパーポールを制したのはキャデラック!
第93回ル・マン24時間レースの最終予選_ハイパーポールが12日に行なわれ、キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAのNo.12 キャデラックVシリーズ.R(ウィル・スティーブンス/ノーマン・ナト/アレックス・リン)がトップタイムをマークし、ポールポジションを手にした。
今年は新方式の予選に
ハイパーポールと呼ばれる最終予選を採用するル・マンだが、今年はその中身を改めた。まず、参戦する全車が出走する予選、そして各クラスから決められた上位車両が出走できる「ハイパーポール1(H1)」、さらに「H1」で上位の結果を残した車両が出走可能な「ハイパーポール2(H2)」と都度ノックアウトを実施する方式を採り入れた。プレビューでも紹介したが、この方式に沿って、まず予選日にあたる11(日)には各クラスからH1に進出する車両を選抜。12(日)に実施したハイパーポールでは、「ハイパーカー」と「LMP2&LMGT3」クラスに区分し、それぞれのセッションでH1、H2を実施した。
ハイパーカークラスの最速は、キャデラック
11日に行なわれた30分間の予選。8メーカー21台がエントリーしているハイパーカークラスだが、「H1」に出走できるのは上位15台。予選を前にした公式練習のセッション1では、キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAのNo.38 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/S.ブルデー/J.バトン)がトップタイムをマークしていたが、予選が始まると、僚友のNo.12 キャデラックVシリーズ.R(W.スティーブンス/N.ナト/A.リン)が躍進。アタックを務めたリンが3分22秒847をマークし、トップに立った。2番手には、BMW MチームWRTのNo.15 BMW MハイブリッドV8(D.ファントール/R.マルチェッロ/K.マグヌッセン)が100分の4秒差で続いた。一方、開幕から3連勝を果たしているフェラーリAFコルセだが、今回はNo.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ)が3番手につけた。
一方、ル・マン初参戦から記念すべき40周年を迎えたトヨタは、存分なパフォーマンスを見せるには至らなかった。トヨタ・ガズー・レーシングは、No.7 トヨタGR010ハイブリッド(M.コンウェイ/小林可夢偉/N.デ・フリース)、No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)の布陣で臨むも、ハートレーがアタックした8号車のみ10番手通過でH1への出場権を獲得。しかし、7号車はデ・フリースがアタック中に他車のアクシデントによって黃旗が提示されるというアンラッキーに見舞われ、惜しくも16番手に留まった。
迎えた翌日のハイパーポール。「H1」「H2」とノックアウトスタイルでの初アタックを迎えたル・マンは、午後9時5分にハイパーカークラスの「H1」がスタートする。まず20分間のH1では、チェッカーが出る最終アタックでキャデラック・ウェーレンのNo.311 キャデラックVシリーズ.R(J.エイトケン/F.ドルゴビッチ/F.ベスティ)がトップタイムをマーク。これに、キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAのNo.38 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/S.ブルデー/J.バトン)、BMW MチームWRTのNo.20 BMW MハイブリッドV8(R.ラスト/R.フラインス/S.ファン・デル・リンデ)が続きトップ3に。8号車のトヨタは6番手でH1通過を果たした。その一方で、フェラーリ勢は51号車に加え、AFコルセのNo.83 フェラーリ499P(R.クビサ/Y.イーフェイ/P.ハンソン)の2台がH2進出を逃す結果に終わっている。
15分のインターバルを挟んで行なわれた「H2」。いよいよ上位10台によるポールポジション争いが15分に渡って行なわれる。なお、H1とH2では異なるドライバーによるアタックがマスト。各チームの戦略も垣間見えるなか、アタック合戦が幕を開けた。
日没間際となるサーキットで始まったタイムアタックだが、なんと8号車トヨタのアタッカーを務めるブエミがミュルサンヌでタイヤをロックさせ、痛恨のコースアウト。コース復帰は叶ったもののタイヤがパンクするというトラブルに見舞われたため、クルマはそのままピットへ。再度アタックすることなくセッション終了を迎えた。このため、8号車は10番手のグリッドとなった。
一方、ポール争いは12号車のキャデラックが好調。ライバルよりやや早いタイミングでアタックを決めた12号車は3分23秒166をマークし、トップへ浮上。その後チェッカーフラッグが振られるなか、H1では2位通過だった38号車のキャデラックが12号車に0.167秒差で2番手へ。これにより、第93回ル・マンの決勝グリッドは、キャデラックがフロントローを独占する結果になった。また、これは1967年以来のアメリカ車による総合ポール獲得であり、アタックを担当したリンにとっては、2004年のJ.ハーバート以来となるイギリス人ドライバーによるポールポジションという結果となっている。
LMP2とLMGT3は混走でのセッションに
一方、WECシリーズではル・マン24時間レースのみ参加できるLMP2クラスは、LMGT3クラスとの混走セッションによる予選に臨んだ。上位12台がハイパーポールへ進出可能となるなか、まずはAO・バイ・TFのNo.199 オレカ07・ギブソン(PJ.ハイエット/D.キャメロン/L.デレトラズ)がトップタイムをマークした。なお、ル・マンの最高峰クラスで3度優勝を果たしているA.ロッテラーは、今年はLMP2クラスで参戦しているが、惜しくもハイパーポールへの進出は逃している。
ハイパーポールには、上位8台が出走。「H1」のセッション中はコースアウトによってグラベルストップした車両が出たため、赤旗中断も見られたが、そのなかで、インターユーロポル・コンペティションのNo.43 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/T.ディルマン/N.イェロリー)がトップ通過を果たした。
H2でも199号車は好タイムをマーク。だが、セッション終盤には激しくトップが入れ替わるアタック合戦へ。結果。チェッカーが振られるなか、最終アタックでTDSレーシングのNo.29 オレカ07・ギブソン(R.セールス/M.ベッシェ/C.ノバラク)がクラストップの奪取に成功。H1でクラストップだった43号車が2番手につけ、予選でクラス最速だった199号車が3番手となっている。
LMGT3の予選でクラストップタイムをマークしたのは、チームWRTのNo.46 BMW M4 LMGT3(A.アル・ハーティ/V.ロッシ/K.ファン・デル・リンデ)。あの2輪の王者、ロッシが所属するチームでもある。LMP2同様、予選上位8台がハイパーポールへと進出し、H1でトップタイムを刻んだのは、46号車。これに、TFスポーツのNo.81 シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R(T.ファン・ロンパウ/R.アンドラーデ/C.イーストウッド)、さらにマンタイ・ファースト・フォームのNo.92 ポルシェ911 GT3 R LMGT3(R.ハードウィック/R.ペーラ/R.リエツ)と、すべて異なる車両でトップ3が形成された。
H1クラストップだった46号車は、H2のアタッカーにロッシが登場。だが、アタックで最速タイムをマークしたのは、ハート・オブ・レーシング・チームのNo.27 アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3(I.ジェームス/M.ドルディ/Z.ロビション)。これにビスタAFコルセのNo.21 フェラーリ296 LMGT3(F.エリオ/S.マン/A.ロベラ)、さらに46号車が続き、予選同様、ここでも異なる車両がトップ3を獲得する結果となった。
ハイパーポール終了後、あらためてナイトセッションが1時間にわたり行なわれたル・マン。これをもって決戦を前にした走行はすべて終了。ちょうど、12日から13日へと日付が変わるタイミングだった。13日はサーキットでのサイン会や、市街地でのドライバーズパレードが行なわれるのみ。いよいよ、14日の決戦を迎えることになる。スタートは現地時間の午後4時。すでに主だった地域が梅雨入りを果たした日本は雨模様だが、ル・マンの天気はまずまずの様子。どのようなドラマを見せてくれるのか。楽しみは尽きない。
第93回ル・マン24時間レース予選(ハイパーポール)各クラストップ3
<HYPERCAR>
1.No.12 キャデラックVシリーズ.R(ウィル・スティーブンス/ノーマン・ナト/アレックス・リン)3’23.166
2.No.38 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/S.ブルデー/J.バトン)3’23.333
3.No.5 ポルシェ963(J.アンドラウアー/M.クリステンセン/M.ジャミネ)3’23.475
<LMP2>
1.No.29 オレカ07・ギブソン(R.セールス/M.ベッシェ/C.ノバラク)3’35.062
2.No.43 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/T.ディルマン/N.イェロリー)3’35.333
3.No.199 オレカ07・ギブソン(PJ.ハイエット/D.キャメロン/L.デレトラズ)3’35.421
<LMGT3>
1.No.27 アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3(I.ジェームス/M.ドルディ/Z.ロビション)3’52.789
2.No.21 フェラーリ296 LMGT3(F.エリオ/S.マン/A.ロベラ)3’53.085
3.No.46 BMW M4 LMGT3(A.アル・ハーティ/V.ロッシ/K.ファン・デル・リンデ)3’54.966
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)