2025 ル・マン24時間レース - イベント・レースレポート

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2025年6月16日 更新

第93回ル・マン、稀に見る接近を83号車フェラーリが制す!

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6月14〜15日、フランス西部に位置するサルト・コースおよび公道を仕様して行なわれたWEC_世界耐久選手権第4戦「第93回ル・マン24時間レース」の決勝が行なわれ、長く続いた大接戦の決戦を制したのは、83号車フェラーリ499P(ロバート・クビサ/イェ・イーフェイ/フィル・ハンソン)。終盤、トップ3をフェラーリが占めて接近戦を繰り広げたが、そのなかでミスなく自分たちのレースを突き進んだ83号車がタフな戦いの頂点に立っている。
 

レーススタート以降、今年のル・マンの決戦は薄曇りながら終始安定した天候に恵まれ、またレース自体も大きなアクシデントやハプニングもなく、各参戦車両が長きに渡ってしのぎを削る戦いを繰り広げた。
 

レースは19時間を過ぎ、51号車は残り時間4時間50分のタイミングでルーティンのピット作業を行なうため、本コースからピットロードへと向かうなか、レーン入口の縁石に乗ってしまいまさかのスピンを喫してしまう。なんとか態勢を保ち、ピットへクルマを戻すことはできたものの、これで大きくタイムロスし、同じフェラーリの83号車の先行を許してしまう。加えて、その背後からはポジション争い中の6号車ポルシェが迫り、僅差の戦いが続くことになった。
 

また、それから1時間後にはトヨタの8号車にまさかのトラブルが発生する。ちょうど26回目のピットピットを終えてコース復帰を果たすなか、ダンロップシケインあたりでタイヤのナットが破損外れ、タイヤがパンク。バランスを崩したクルマはスローダウンを強いられることに。ドライブしていた平川は、スローペースでほぼ1周したが、途中のユノディエール第2シケインあたりではついにタイヤが外れてしまう。なんとか3輪走行でピットへ帰還を果たしたもののガレージインを強いられ、18分ほどかけての修復作業が行なわれた。一時は表彰台獲得の可能性もあっただけに、悔しい後退となってしまった。
 

正午を過ぎ、トップを走るのは83号車フェラーリ。これに開幕戦から の3連勝で勝ち星を分け合ってきた同じフェラーリの50、51号車が続き、6号車ポルシェが4番手につける。一方、アクシデントで14番手まで後退してしまった8号車トヨタに代わり、僚友の7号車が6番手まで浮上。最後まで粘りの走りを続ける。
 

土曜日は曇り空先行の天候だったが、日曜日はチェッカーが近づくにつれ、日差しも照り青空が顔を見せる。そのなかでチェッカーまで2時間を迎えるなかで6号車ポルシェが51号車フェラーリを逆転。なんとかフェラーリの表彰台独占を阻止しようと意気込む。戦略的にもほぼ同じタイミングでのピットインはするものの、タイヤ交換のタイミングをずらすなどの”駆け引き”を見せ、揺さぶりをかけ続けた。
 

いよいよ各チームが最後のピットインを迎えるなか、83号車フェラーリは残り1時間半強の時点で給油とタイヤ交換を実施。逆に勝負をかける6号車ポルシェが給油のみでピットを離れると、6号車ポルシェの先行を阻止したい50号車フェラーリも給油のみに留め、猛追を開始したのだが…なんと復帰したアウトラップ中、コース上で態勢を崩すという痛恨のミスを犯した。その後、攻防戦を繰り広げる50号車フェラーリが最後のピットインを完遂。これで表彰台争いを続ける車両によるピットインが終了することとなり、83号車フェラーリをトップにおよそ11秒差で6号車ポルシェが続き、51号車フェラーリがおよそ8秒差、そしてミスで後退した50号車フェラーリが1秒を切る僅差で追随し、時折ポジションを入れ替えての攻防戦を披露した。
 

大詰めを迎えた決勝は、残り10分を切ってなお、51号車と50号車のフェラーリ同士による3位争いが続く一方、トップは83号車フェラーリが死守。出入りの激しい走りでミスが目立った”ライバル”のフェラーリに対し、安定感ある走りを完遂させた83号車が387周を走破してトップチェッカーを受けた。2位に続いた6号車ポルシェは、車両規定違反でクラス最後尾からの21位スタートだったが、持ち前の速さと勝負強さを武器にポジションアップを果たし、シーズン初となる表彰台を手に入れた。そして注目のフェラーリ同士による3位争いは、昨年のル・マンを制した51号車に軍配が上がっている。
一方、厳しい戦いのなかでも終始粘りのパフォーマンスを見せたトヨタ勢。8号車はタイヤのトラブルで後退し、16位チェッカーに甘んじたが、後方スタートの7号車は着実にポジションアップを果たすと、最後は6位でチェッカーを受けている。
 

このほか、LMP2は、レース後半からつねにクラス優勝争いを続ける43号車と48号車のレカ07・ギブソンの2台が、チェッカーまで残り30分を切ってもポジションを入れ替えての争いを展開。大終盤、クラストップを走行していた43号車はドライブスルーペナルティが課され、一時は48号車に先行されたが、再びトップを奪取。このまま逃げ切り勝利を果たすこととなった。
 

LMGT3ではレース折り返しを前にトップに立った92号車ポルシェが順調なレース運びを見せ、このまま終盤へ。これに、21号車フェラーリ、さらには81号車シボレー・コルベットによるトップ3が最後までポジションを変えることなく戦いを終えている。
 

安定したレースコンディションでの開催となった今年のル・マン。トップカテゴリーのハイパーカークラスでは、全21台のうち19台がチェッカーを受け、またトータルでも全62台のうち50台が24時間の戦いを走り終える結果となった。かつては、完走すれば好結果がついてくると言われたル・マンだが、近年は小さなミスでさえ優勝争いに大きな影響を与えるほどレースの精度が高まっている。なおフェラーリは車両こそ違えど、開幕戦から4連勝を達成。この先、シーズン中にどのライバルチームが真っ先に連勝を阻むのか。こちらも気になるところ。息詰まる攻防戦を24時間続けるなか、いかに安定した速さと強さを維持できるか。ますます緻密な戦い方が求められることになりそうだ。
 

◎ル・マン24時間レース最終結果(総合トップ3および各クラストップ)

<HYPERCAR>
1.No.83 フェラーリ499P(R.クビサ/Y.イーフェイ/P.ハンソン)387周
2.No.6 ポルシェ963(K.エストーレ/L.ファントール/M.キャンベル)+14.084
3.No.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ)+28.487
 

<LMP2>
1.No.43 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/T.ディルマン/N.イェロリー)367周
 

<LMGT3>
1.No.92 ポルシェ911 GT3 R LMGT3(R.ハードウィック/R.ペーラ/R.リエツ)341周
 
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)
 

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2025年6月15日 更新

第93回ル・マン、6時間を残してなおも接近戦を展開

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6月14日、現地時間午後4時に長い戦いの幕が上がった第93回ル・マン24時間レース。曇り空ながら安定した天候が続き、またレース自体も大きなアクシデントやマシントラブルなども限りなく少ない展開になった。セーフティカーに限らずフルコースイエロー(FCY)も極力少ないレースとなり、各クラスともトップの独走を許すことなく接近戦が続いている。
 

レース折り返しを前に、決勝初となるセーフティカーがコースインした今年のル・マン。レーススピードでの戦いが再開するまで30分ほどの時間を要したことで、各車が12時間近く走るなかで築き上げたマージンがすべて水泡に帰すこととなった。逃げたい車両にとってはマージンではあるものの、ポジションアップを狙う後続車にとっては好機到来。とりわけ上位争いのなかから一気に表彰台が見えてきた8号車トヨタにとっては見せ場の多いレース後半の戦いになることを予感させた。
 

今年の戦いはアクシデントやトラブルが少なく、加えて上位争いの各車がライバルを牽制するかのようなピット戦略を展開。少しずつピットインやこれに合わせて行なうタイヤ交換のタイミングをずらすことで、より有利に立とうと奮闘した。そんななか、6号車ポルシェから再びトップを奪還したのが83号車フェラーリ。これに8号車トヨタが続き、その後方では51号車フェラーリが徐々にトップ2台との差を詰め始めた。
 

その後、スタートからまもなく15時間を迎えるなか、ピットインのタイミングによってポジションが交代。気温21度、路面温度16度のコンディションのなかでトップを走るのは、51号車フェラーリ。これにわずか2.3秒差で83号車フェラーリ、さらに8号車トヨタが続く。51号車はその後もトップを牽引、また83号車もピタリと続き、午前9時、チェッカーまで残り7時間となる時点で50号車フェラーリが3番手へと浮上。ついにフェラーリ勢がトップ3を独占してみせる。
 

レースは4分の3を消化し、いよいよ残るは6時間となってもフェラーリのトップ3は変わらず。ライバルメーカーではなく、終盤はフェラーリ同士による優勝争いが激化するのか否か。また、この時点で4位の6号車ポルシェを5位で追う8号車のトヨタに逆転のチャンスはあるのか。あと6時間とはいえ、まだまだ”なにか”が起こりそうなル・マンだ。
 

LMP2クラスは48号車と43号車がポジションを入れ替えながらトップ争いを展開。いずれもピットインのタイミングによるものだが、これに28号車が続き、残り10時間となってからはこの3台による”定位置”で周回を重ねている。一方、LMGT3クラスでは、”恒例の”ポルシェvsフェラーリによる戦いに。P2同様、残り10時間の時点で、92号車ポルシェ、21号車フェラーリ、そして81号車フェラーリがトップ3を形成しながらポジション争いを繰り広げている状態だ。
 

18時間が経過、チェッカーまで残り6時間となった時点の総合トップ3および各クラストップは以下のとおり。
 

◎ル・マン24時間レース途中結果(午前10時・18時間経過/総合トップ3および各クラストップ)気温22度、路面温度18度

<HYPERCAR>
1.No.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ)289周
2.No.83 フェラーリ499P(R.クビサ/Y.イーフェイ/P.ハンソン)+7.119
3.No.50 フェラーリ499P(A.フォコ/N.ニールセン/M.モリーナ)+37.036
 

<LMP2>
1.No.43 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/T.ディルマン/N.イェロリー)274周
 

<LMGT3>
1.No.92 ポルシェ911 GT3 R LMGT3(R.ハードウィック/R.ペーラ/R.リエツ)255周
 
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)

 
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2025年6月15日 更新

第93回ル・マン、開始6時間以降レース折り返しまで僅差の戦い続く

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6月14日、フランス現地時間午後4時に号砲となった第93回ル・マン24時間レース。曇り空の下、順調にレースが進み早や折り返しの12時間が経過した。そのなかでハイパークラスは6号車ポルシェが安定感ある走りを続け、暫定トップを守っている。
 

レース開始から6時間が過ぎ、ル・マンは日没を迎え徐々に各車が照らすヘッドライトだけがコースを灯すように。6時間終了時にはLMGT3の1台のみがリタイヤするだけだったが、7時間を過ぎると計3台に増え、どんどんタフなコンディションになっていることを感じさせた。その後、スタートから8時間を迎えて現地はちょうど夜中12時となり、日付も15日に。気温24度、路面温度19度のなか83号車のフェラーリがトップを走り、同じフェラーリの51号車、そして6号車ポルシェの3台に続き、50号車のフェラーリが4番手。予選では思うほどタイムを伸ばせなかったフェラーリだが、シーズン開幕から3連勝を続けるチームとしての実力をしかと発揮し、徐々にレースの主導権を握るようになる。ところが、9時間を過ぎ、51号車はルーティン作業からのコース拭きでタイヤトラブルが発生し、イレギュラーピットインを強いられてトップ3からポジションダウン。さらには、このトラブルが他車との接触が理由ということから、次のピットストップで5秒のペナルティが加算されるだけでなく、その復帰時のピットレーン速度違反が問われるというミスを連発。これで20秒のピットストップペナルティが課され、トップ3から脱落する。
 

一方、厳しい戦いが続くトヨタ勢はミスなく安定したルーティンワークを重ねるなか、着実にポジションアップを果たし、この時点では8号車が5番手、7号車は12番手で周回を続けた。
 

レースは、まもなく折り返しの12時間を迎える30分ほど前に決勝レース初のセーフティカーがコースイン。LMP2の車両がテルトルルージュのタイヤバリアに激しく突っ込み、車両の撤去とダメージを受けたガードレールの修復等でおよそ30分間に渡り、レースがコントロール下に置かれることになる。各車この間にピットへと戻り、ルーティン作業を行なったりダメージを受けたボディパーツを交換したり、とピットでの動きが賑やかに。ようやく午前3時50分すぎにセーフティカーがコースからいなくなると、リスタートとともにギャップがほぼなくなった各車が激しいポジション争いを繰り広げた。
 

結果、トップを走る6号車ポルシェの背後に8号車トヨタが迫り、トップ争いを展開。一時はトップを奪うパフォーマンスを見せるシーンも見られた。ハイパーカークラスではノントラブルでの周回が続いており、ピットやコース上での小さなミスが命取りに成りかねない神経戦でレース前半を終えているだけに、ゴールに向けてレース終盤へと向かうなか、どのようなドラマが待ち受けるのか大いに気になるところだ。
 

なお、LMP2クラスでは日没後から48号車が依然としてトップをキープ、これに、9号車、43号車が変わらぬ位置で戦いを続けている。また、LMGT3は、ルーティンのピットインのタイミングでポジションを入れ替える形が続いている。そのなかでちょうどレース折り返しのタイミングでトップを走るのは、92号車ポルシェ。これに81号車コルベット、さらには78号車レクサスRC Fが続いている。
 

現地時間の午前4時、レース折り返しにあたる12時間が経過した時点の総合トップ3および各クラストップは以下のとおり。
 

◎ル・マン24時間レース途中結果(午前4時・12時間経過/総合トップ3および各クラストップ)気温22度、路面温度15度

<HYPERCAR>
1.No.6 ポルシェ963(K.エストーレ/L.ファントール/M.キャンベル)192周
2.No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)+4.450
3.No.83 フェラーリ499P(R.クビサ/Y.イーフェイ/P.ハンソン)+7.215
 

<LMP2>
1.No.48 オレカ07・ギブソン(O.グレイ/E.マッソン/F.ペレラ)182周
 

<LMGT3>
1.No.92 ポルシェ911 GT3 R LMGT3(R.ハードウィック/R.ペーラ/R.リエツ)170周
 
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)
 
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2025年6月15日 更新

第93回ル・マン時間、フェラーリ&ポルシェが奮闘

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6月14日、WEC世界耐久選手権第4戦に位置付けされる第93回ル・マン24時間レースがスタート。伝統の耐久レースは曇り空のなか、長い戦いの幕が上がった。最初の6時間は大きなクラッシュ等のアクシデントはないものの、激しいポジション争いを繰り広げている。
 

現地時間午後4時に号砲を迎えたフランス ル・マンのサルト・サーキット。決勝直前、正午から15分間のウォームアップ走行後、セレモニーが行なわれ、メイングリッドには戦いを前に全62台の車両、そしてドライバーやチーム関係者が勢揃いした。
 

気温22度、路面温度27度と過ごしやすいコンディションのなか、次々とグリッドを離れる各車。トヨタの7号車にはコンウェイ、8号車はブエミが乗り込んでいる。今年はプロテニスプレーヤーのロジャー・フェデラー氏をスターターに迎え、順調にオープニングラップを迎えた。
 

そんななか、早くも予選トップ2の12号車と38号車のキャデラックが激しい鍔迫り合いを見せる。また、その背後から5号車ポルシェが迫ると、キャデラックの間に割って入り、ユノディエールでトップ奪取に成功してみせた。5号車、12号車、38号車がトップ3を形成し、その後ろには予選5番手の4号車ポルシェが浮上した。また、最低重量違反によりクラス最後尾スタートに甘んじた6号車のポルシェだが、怒涛の追い上げを続け、スタートから1時間を前に行なわれた最初のルーティンを終えた時点で5番手まで浮上する活躍を見せている。
 

その後は、開幕から3連勝を続けているフェラーリ勢が台頭。およそスタートから3時間を迎えるタイミングで50号車がトップを奪取、これに6号車ポルシェ、5号車ポルシェ、さらに51号フェラーリとキャデラックを抑えて2メーカーが激しい上位争いを繰り広げた。また、5時間を過ぎて6位を走る8号車トヨタは平川亮が、そして7号車には小林可夢偉が乗り込んでおり、それぞれ6位、12位での走行を続けている。
 

一方、LMP2クラスは燃料タンクがコンパクトのため、どのカテゴリーよりも早めのピットインを実施。およそ35〜40分を目処にピットに戻ってルーティン作業をこなしていった。そのなかで予選2位からスタートを切った43号車はスタートから1時間を迎える前にクラストップを奪取。その後も順調に周回を重ねたが、5時間を過ぎる頃には、予選クラス11番手の48号車がトップへ。レース4分の1にあたる6時間を終了した時点では、48号車に続き、クラス3番手スタートの199号車、9号車がトップ3となっている。
 

また、LMGT3では、27号車アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3がクラストップをキープしていたが、1時間を経過すると78号車レクサスRC F LMGT3がトップに。その後もルーティンのピットインを機にポジションが入れ替わる形となり、6時間を経過した時点では、かつての2輪王者であるロッシが加入する46号車BMW M4 GT3がトップを走行している。
 

スタートから6時間が過ぎ、現地22時を迎えたル・マン。日没を迎えいよいよナイトセッションに突入する。4分の1を終えた時点の総合トップ、および各クラストップは以下のとおり。
 

◎ル・マン24時間レース途中結果(22時・6時間経過/総合トップ3および各クラストップ)気温25度、路面温度20度

<HYPERCAR>
1.No.83 フェラーリ499P(R.クビサ/Y.イーフェイ/P.ハンソン)99周
2.No.50 フェラーリ499P(A.フォコ/N.ニールセン/M.モリーナ)+3.962
3.No.6 ポルシェ963(K.エストーレ/L.ファントール/M.キャンベル)+26.578
 
<LMP2>
1.No.48 オレカ07・ギブソン(O.グレイ/E.マッソン/F.ペレラ)94周
 
<LMGT3>
1.No.46 BMW M4 LMGT3(A.アル・ハーティ/V.ロッシ/K.ファン・デル・リンデ)87周
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)
 

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2025年6月13日 更新

第93回ル・マン24時間、予選・ハイパーポールを制したのはキャデラック!

Q01

 

第93回ル・マン24時間レースの最終予選_ハイパーポールが12日に行なわれ、キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAのNo.12 キャデラックVシリーズ.R(ウィル・スティーブンス/ノーマン・ナト/アレックス・リン)がトップタイムをマークし、ポールポジションを手にした。
 

今年は新方式の予選に

ハイパーポールと呼ばれる最終予選を採用するル・マンだが、今年はその中身を改めた。まず、参戦する全車が出走する予選、そして各クラスから決められた上位車両が出走できる「ハイパーポール1(H1)」、さらに「H1」で上位の結果を残した車両が出走可能な「ハイパーポール2(H2)」と都度ノックアウトを実施する方式を採り入れた。プレビューでも紹介したが、この方式に沿って、まず予選日にあたる11(日)には各クラスからH1に進出する車両を選抜。12(日)に実施したハイパーポールでは、「ハイパーカー」と「LMP2&LMGT3」クラスに区分し、それぞれのセッションでH1、H2を実施した。
 

ハイパーカークラスの最速は、キャデラック

11日に行なわれた30分間の予選。8メーカー21台がエントリーしているハイパーカークラスだが、「H1」に出走できるのは上位15台。予選を前にした公式練習のセッション1では、キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAのNo.38 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/S.ブルデー/J.バトン)がトップタイムをマークしていたが、予選が始まると、僚友のNo.12 キャデラックVシリーズ.R(W.スティーブンス/N.ナト/A.リン)が躍進。アタックを務めたリンが3分22秒847をマークし、トップに立った。2番手には、BMW MチームWRTのNo.15 BMW MハイブリッドV8(D.ファントール/R.マルチェッロ/K.マグヌッセン)が100分の4秒差で続いた。一方、開幕から3連勝を果たしているフェラーリAFコルセだが、今回はNo.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ)が3番手につけた。
 

一方、ル・マン初参戦から記念すべき40周年を迎えたトヨタは、存分なパフォーマンスを見せるには至らなかった。トヨタ・ガズー・レーシングは、No.7 トヨタGR010ハイブリッド(M.コンウェイ/小林可夢偉/N.デ・フリース)、No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)の布陣で臨むも、ハートレーがアタックした8号車のみ10番手通過でH1への出場権を獲得。しかし、7号車はデ・フリースがアタック中に他車のアクシデントによって黃旗が提示されるというアンラッキーに見舞われ、惜しくも16番手に留まった。
 

迎えた翌日のハイパーポール。「H1」「H2」とノックアウトスタイルでの初アタックを迎えたル・マンは、午後9時5分にハイパーカークラスの「H1」がスタートする。まず20分間のH1では、チェッカーが出る最終アタックでキャデラック・ウェーレンのNo.311 キャデラックVシリーズ.R(J.エイトケン/F.ドルゴビッチ/F.ベスティ)がトップタイムをマーク。これに、キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAのNo.38 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/S.ブルデー/J.バトン)、BMW MチームWRTのNo.20 BMW MハイブリッドV8(R.ラスト/R.フラインス/S.ファン・デル・リンデ)が続きトップ3に。8号車のトヨタは6番手でH1通過を果たした。その一方で、フェラーリ勢は51号車に加え、AFコルセのNo.83 フェラーリ499P(R.クビサ/Y.イーフェイ/P.ハンソン)の2台がH2進出を逃す結果に終わっている。
 

15分のインターバルを挟んで行なわれた「H2」。いよいよ上位10台によるポールポジション争いが15分に渡って行なわれる。なお、H1とH2では異なるドライバーによるアタックがマスト。各チームの戦略も垣間見えるなか、アタック合戦が幕を開けた。
 

日没間際となるサーキットで始まったタイムアタックだが、なんと8号車トヨタのアタッカーを務めるブエミがミュルサンヌでタイヤをロックさせ、痛恨のコースアウト。コース復帰は叶ったもののタイヤがパンクするというトラブルに見舞われたため、クルマはそのままピットへ。再度アタックすることなくセッション終了を迎えた。このため、8号車は10番手のグリッドとなった。
 

一方、ポール争いは12号車のキャデラックが好調。ライバルよりやや早いタイミングでアタックを決めた12号車は3分23秒166をマークし、トップへ浮上。その後チェッカーフラッグが振られるなか、H1では2位通過だった38号車のキャデラックが12号車に0.167秒差で2番手へ。これにより、第93回ル・マンの決勝グリッドは、キャデラックがフロントローを独占する結果になった。また、これは1967年以来のアメリカ車による総合ポール獲得であり、アタックを担当したリンにとっては、2004年のJ.ハーバート以来となるイギリス人ドライバーによるポールポジションという結果となっている。
 

LMP2とLMGT3は混走でのセッションに

一方、WECシリーズではル・マン24時間レースのみ参加できるLMP2クラスは、LMGT3クラスとの混走セッションによる予選に臨んだ。上位12台がハイパーポールへ進出可能となるなか、まずはAO・バイ・TFのNo.199 オレカ07・ギブソン(PJ.ハイエット/D.キャメロン/L.デレトラズ)がトップタイムをマークした。なお、ル・マンの最高峰クラスで3度優勝を果たしているA.ロッテラーは、今年はLMP2クラスで参戦しているが、惜しくもハイパーポールへの進出は逃している。
 

ハイパーポールには、上位8台が出走。「H1」のセッション中はコースアウトによってグラベルストップした車両が出たため、赤旗中断も見られたが、そのなかで、インターユーロポル・コンペティションのNo.43 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/T.ディルマン/N.イェロリー)がトップ通過を果たした。
 

H2でも199号車は好タイムをマーク。だが、セッション終盤には激しくトップが入れ替わるアタック合戦へ。結果。チェッカーが振られるなか、最終アタックでTDSレーシングのNo.29 オレカ07・ギブソン(R.セールス/M.ベッシェ/C.ノバラク)がクラストップの奪取に成功。H1でクラストップだった43号車が2番手につけ、予選でクラス最速だった199号車が3番手となっている。
 

LMGT3の予選でクラストップタイムをマークしたのは、チームWRTのNo.46 BMW M4 LMGT3(A.アル・ハーティ/V.ロッシ/K.ファン・デル・リンデ)。あの2輪の王者、ロッシが所属するチームでもある。LMP2同様、予選上位8台がハイパーポールへと進出し、H1でトップタイムを刻んだのは、46号車。これに、TFスポーツのNo.81 シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R(T.ファン・ロンパウ/R.アンドラーデ/C.イーストウッド)、さらにマンタイ・ファースト・フォームのNo.92 ポルシェ911 GT3 R LMGT3(R.ハードウィック/R.ペーラ/R.リエツ)と、すべて異なる車両でトップ3が形成された。
 

H1クラストップだった46号車は、H2のアタッカーにロッシが登場。だが、アタックで最速タイムをマークしたのは、ハート・オブ・レーシング・チームのNo.27 アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3(I.ジェームス/M.ドルディ/Z.ロビション)。これにビスタAFコルセのNo.21 フェラーリ296 LMGT3(F.エリオ/S.マン/A.ロベラ)、さらに46号車が続き、予選同様、ここでも異なる車両がトップ3を獲得する結果となった。
 

ハイパーポール終了後、あらためてナイトセッションが1時間にわたり行なわれたル・マン。これをもって決戦を前にした走行はすべて終了。ちょうど、12日から13日へと日付が変わるタイミングだった。13日はサーキットでのサイン会や、市街地でのドライバーズパレードが行なわれるのみ。いよいよ、14日の決戦を迎えることになる。スタートは現地時間の午後4時。すでに主だった地域が梅雨入りを果たした日本は雨模様だが、ル・マンの天気はまずまずの様子。どのようなドラマを見せてくれるのか。楽しみは尽きない。
 

 

第93回ル・マン24時間レース予選(ハイパーポール)各クラストップ3

 
<HYPERCAR>
1.No.12 キャデラックVシリーズ.R(ウィル・スティーブンス/ノーマン・ナト/アレックス・リン)3’23.166
2.No.38 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/S.ブルデー/J.バトン)3’23.333
3.No.5 ポルシェ963(J.アンドラウアー/M.クリステンセン/M.ジャミネ)3’23.475
 
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<LMP2>
1.No.29 オレカ07・ギブソン(R.セールス/M.ベッシェ/C.ノバラク)3’35.062
2.No.43 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/T.ディルマン/N.イェロリー)3’35.333
3.No.199 オレカ07・ギブソン(PJ.ハイエット/D.キャメロン/L.デレトラズ)3’35.421
 
Q03
 

<LMGT3>
1.No.27 アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3(I.ジェームス/M.ドルディ/Z.ロビション)3’52.789
2.No.21 フェラーリ296 LMGT3(F.エリオ/S.マン/A.ロベラ)3’53.085
3.No.46 BMW M4 LMGT3(A.アル・ハーティ/V.ロッシ/K.ファン・デル・リンデ)3’54.966
 

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(TEXT : Motoko SHIMAMURA)



2025年6月12日 更新

2025年 ル・マン24時間レース プレビュー

予測不可能な戦いはル・マンならでは
 

モータースポーツ好きなら、6月の一大イベントとしてすぐ思い出すのが、「ル・マン24時間レース」。おそらくテニス好きなら全仏オープンやウィンブルドン選手権をイメージするのと同じだ。今年で93回目の開催を迎える伝統のル・マン。今年は、6月14日から15日にかけて決勝レースが行なわれる。自動車技術の最先端を導入する一方、しばらく参戦から遠ざかっていた名門が次々復活を遂げるなど、つねに話題に事欠かないイベントだが、果たして今年はどんなドラマを繰り広げてくれるのだろうか。
 

WEC第4戦というよりも、”ル・マン24時間”

伝統のル・マン24時間レースが、FIA世界耐久選手権のシリーズ戦に組み込まれてからもう随分と長いシーズンが流れているが、今年のWEC第4戦の戦いというより、どうしてもル・マン24時間レースという独立したイベントとして捉えてしまう。それだけ他のシリーズ戦と違って特別感が強いということだろう。
 
今年のル・マンのハイパーカー(LMH)クラスには、8メーカー21台がエントリー。LMGT3クラスには24台が名乗りを挙げている。なかにはシリーズに参戦していないチームもいるし、別途開催されているヨーロッパ・ル・マン・シリーズ(ELMS)からは、LMP2クラスの17台が参戦するため、合計62台が勢揃いすることになる。常設コースの「ブガッティサーキット」(1周約4.2km)と一般公道を合わせ、1周13.6kmという長いコースで競う戦いだが、62台ものクルマが次々と疾走する姿はまさに圧巻! これぞ伝統の耐久レースというインパクトがある。
 
最高峰クラスのハイパーカーに集うのは、トヨタをはじめ、ポルシェ、フェラーリ、アルピーヌ、ポルシェ、アルトンマーティン、キャデラック、BMW、プジョーの8メーカー。細かくは「LMH」、「LMDh」に区分された規定車が混在している。一方、9メーカーが参戦するLMGT3クラスから出走する車両には、アストンマーティン・バンテージ、シボレー・コルベットZ06、フェラーリ296、BMW M4、マクラーレン720S、メルセデスAMG、フォード・マスタング、レクサスRC F、ポルシェ911と名だたるGT3カーがズラリ。なかでも注目は、四半世紀を超えてWEC参戦となるメルセデス。復帰したクルマのカラーリングは、もちろん”シルバーアロー”仕様になっており、往年のファンを喜ばせている。さらに、マクラーレンも1995年にF1 GTRでル・マンに初出場&優勝を果たした記念の年から30周年を迎えるため、何かと話題に事欠かない。ここにオレカ07・ギブソンを使用するLMP2が加わり、グリッド制限の上限ギリギリとなる合計62台が24時間という長い戦いに臨むことになる。
 

レース本番1週間前のテストデーはトヨタがトップタイム

一般公道を含むコースを走るル・マン。このため、事前のテスト走行は欠かせない。今年は、6月8日(日)に公式テストが実施され、参戦する車両は包括的なプログラムメニューにそってセットアップやタイヤのフィーリングを確認する一方、ライバルとの比較等、目に見えない”駆け引き”もあり、本番に向けて徐々にモチベーションが高揚する時間を過ごしている。また、これに先立ち、6、7日にはル・マンの市街地で行なわれる公開車検も実施されており、すでに街なかがお祭り騒ぎ状態となったのは言うまでもない。
 

テストデーは晴れのコンディションながら、午前中の気温は15度止まりでやや肌寒いコンディション。午後に向けて気温は上昇したが曇り空が先行するなかで、各車がセットアップを進めた。予選を意識したアタックシミュレーションに着手するチームも多く、そのせいか、セッション中盤、さらには終了30分を前にして赤旗中断というシーンも。やや荒れ模様のセッションはチェッカーを目前にして3回目の赤旗を招くほどだった。そのなかでトップタイムをマークしたのは、セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組のNo.8 TOYOTA GR010 HYBRID。ハートレーがアタックを務め、幸先良いスタートを切ることができたようだ。
 

なお、トヨタにとって、今年はル・マン初挑戦から40周年を迎える節目(参戦は今年で27回目)の年にあたる。これを記念し、トヨタでは参戦車両にスペシャルカラーリングを施して登場する。過去のル・マンの戦いで5勝を挙げ、ポールポジションは8度獲得。表彰台に上がった回数は18回だが、今年目指すのは、2022年以来となる総合優勝。今シーズンの戦いを振り返ると、これまでの3戦で優勝は果たしておらず、厳しい戦いが続いている。だが、2台揃って3戦連続でポイント獲得をキープ。マニュファクチャラーズランキング2位でル・マンへと乗り込む。
 

予選、そして決勝に向けて

公式テスト後は、11日(水)から本格的なサーキットでの”お仕事”がスタートする。まず、2度の練習走行セッションと予選を実施。練習走行の間に行なわれる予選で、上位15台のハイパーポール進出を決定する。栄えある15台は、翌12日(木)に行なわれる2度のハイパーポールでポールポジションを目指すのだが、ここが去年までの方式と大きく異なる。
 

昨年までは、予選で各クラス上位8台、計24台がハイパーポールに進出して上位グリッドを確定していた。だが、今年は、ハイパーカークラス上位15台と、LMP2およびLMGT3クラス上位12台ずつの2つに区分。各々2回のハイパーポールを実施するのだが、すべての車両が2回のアタックを行なうのではなく、まず最初のハイパーポールを「H1」と名付け、ハイパーカークラスはうち上位10台が2回目のハイパーポール「H2」に進出できる。一方、LMP2およびLMGT3クラスでは、「H1」のそれぞれ上位8台が「H2」へ駒を進めることができる。さらに、H1とH2で同じドライバーがアタックすることは認められておらず、加えて必ずブロンズドライバー、いわゆるノンプロのジェントルマンドライバーがアタックすることになる。出走台数をふるいかけたり異なるドライバーが出走するのは日本のSUPER GTの予選方式と似ているが、LMP2およびLMGT3クラスでは必ずジェントルマンドライバーの出走を義務付けているのが、いかにも”ル・マンならでは”のルールと言えるだろう。参考までに、テストデーでの各クラストップタイムを刻んだのは、LMP2クラスでは、No.22 ユナイテッド・オートスポーツで、LMGT3は、No.87 アコーディスASPチームのレクサスRC Fだった。
 

なお12日は、ハイパーポールのほか、前日に続いて練習走行も行なうが、これで決勝を前にした走行セッションはすべて終了となる。天気予報では、日中の気温もしっかりと上がるようで、テストデーとはまた異なるセッションでのアタックが繰り広げられそうだ。翌13日(金)は、市内で実施される恒例のドライバーズパレード等のイベントが行なわれ、ル・マンの街はレース一色に変わっていく。
 

そして迎える決勝。現在、土曜、日曜とも本降りの雨は回避できそうだが、なにしろ24時間レースゆえ、突然の天候の変化も否めない。そのなかで、トラブルフリーで真の実力をいかに発揮するか。予測不可能なドラマが幾重にも重なり、思いもしない展開になるのか。あるいは、今シーズン序盤から安定感に秀でた常勝チームのフェラーリがル・マンでも勝利するのか。はたまた、シーズン開幕以降、辛酸を嘗め続けているトヨタが劣勢を一気に覆すのか。どのような結末になろうとも、ル・マンならではのドラマを今年も見ることができるのは、言うまでもない。
 
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)








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