第2戦鈴鹿を制したのは、牧野任祐!
3月9日、前日に続いて全日本スーパーフォーミュラの開幕イベントの舞台となる三重・鈴鹿サーキットは、冷たい強風が吹く肌寒い1日ながら日差しには恵まれる天候となった。そんななか、第2戦の予選と決勝が行なわれ、予選5位スタートのNo. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が速さを活かした戦略を味方、逆転優勝を果たしている。
第2戦の予選は午前10時15分にスタート。第1戦とは異なるグループ分けが行なわれ、A、B各組のQ1がまず行なわれた。アタックに向けて滑り出しの良さをアピールしたのは、No.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)。コースインとともにニュータイヤでの走行を続け、アタックのタイミングを見計らった。前日よりも気温、路面温度が上昇し、それぞれ11度、16度というコンディションをうまく味方につけたいところ。前日のQ1・A組でトップタイムをマークした岩佐は、このセッションでも快走を見せ、1分37秒311のタイムでトップに浮上した。一方、岩佐に続いてアタックしていたNo.1 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOMʼS)は、あと一歩及ばず。すると、第1戦で悔しい結果に終わった牧野が渾身のアタックで1分37秒236をマーク。岩佐に対して0.075秒という僅差でA組のトップをさらうことに成功した。そして、3番手には前日から高いパフォーマンスを披露しながらも、決勝はマシントラブルで存分に走れなかったルーキーのNo.50 小出 峻(San-Ei Gen with B-Max)が続いた。第1戦の勝者、No. 6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が出走したB組には、前日のポールシッターであるNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)も出走。チームメイトの岩佐同様、野尻も走り出しからライバルから頭ひとつ飛び出す速さを見せる。アタックラップでもその勢いのまま1分36秒633の最速ラップをマーク、トップでQ2進出を決めて見せた。これに続いたのは、第1戦決勝3位のNo.64 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)。一方の太田は3番手でのQ1通過となった。
Q2は12台による争い。今回は小出だけが唯一のルーキーとなる。第1戦同様に、今回も10分間設けられた走行では、ユーズドタイヤでまずコンディションを確認し、ピットに戻ってアタックに備えるドライバーも見受けられた。しばしピットでの待機を経ていよいよ最後のアタック合戦が始まると、最初に動いたのは小出。これをターゲットタイムとして続々とアタックが始まった。チェッカーフラッグが振られるなか、野尻が1分36秒060と前日自身がマークしたタイムを上回る速さでトップに。一方の岩佐は野尻のタイムに0.110秒及ばず、またも2番手。そして、3番手には太田が続き、第1戦と同じ顔ぶれがトップ3を占める結果となった。なお、通算21回目のポールポジション獲得を果たした野尻。これによって、最多獲得レコードを更新。記者会見では笑顔で関係者への感謝を口にしつつ、決勝に向けても自信をのぞかせた。
【第1戦鈴鹿 予選トップ3】
1.No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’36.060
2.No.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)1’36.170
3.No. 6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)1’36.209
決勝レース
午後に入ると、さらに風が強まった鈴鹿。一方、強い日差しで路面温度は上昇。結果、気温15度、路面温度38度のなかで31周の戦いの火蓋が切って落とされた。
なお、前日の第1戦とは異なり、第2戦はタイヤ交換におけるピットインのタイミング、つまりピットウインドウはなく、各チーム、ドライバーとも戦略が読めない状態。とりわけ上位陣はライバルを意識した頭脳戦になるであろう行方にも注目が集まることとなった。
最多ポールポジション獲得を果たした野尻だったが、2速へのシフトアップがうまく行かず、スタートで隣の岩佐に先行を許してしまう。この状況を受けて戦略を切り替えたか、1周終了後早々にピットインした。また、野尻に続き、太田はじめ合計5台がピット作業を行ない、コースへと復帰する。その後、2周目のスプーンカーブでは、野尻と太田が激しいサイド・バイ・サイドの激しい攻防戦を展開し、太田が逆転に成功。一方、スタートで野尻に変わってトップに立った岩佐も翌周にピットへ。予選上位陣の中では、4番手スタートの坪井、5番手の牧野がステイアウトを選択、見えない敵との戦いながら、ペース良く周回を重ねていった。
暫定トップの牧野は坪井に2秒近く差をつけて走るも、”裏トップ”の岩佐に対して大量のマージンをなかなか築けない。だが、その岩佐もまた背後から攻め立てる太田を意識せざるを得ない状況となり、難しい状況に置かれた。結果、14周目のシケインで激しいポジション争いとなり、ブレーキングをガマンした太田がオーバーランの末にショートカットする形で岩佐の前に出る。だが、太田はチームを含めた判断でバックオフしてポジションを戻すことはせず、その後もトップで走行を続ける。一方、この事態を受け、走路外走行の審議がなされることとなった。
そんななか、20周を終えて暫定トップの牧野がピットへと向かうと、2番手の坪井も追随。前日のピット作業ではエンジンストールを喫し、悔しい思いをした牧野だったが、今回はトップを死守してコース復帰に成功。一方、坪井はポジションキープとはいかず、太田が牧野との間に割って入った。
冷えたタイヤで懸命に逃げる牧野だったが、太田が瞬く間に差を詰めてヘアピン先の200Rであっさりと逆転。名実ともにトップに躍り出る。ところが、22周目、審議中だった走路外走行に対して判定が下り、太田には競技結果に5秒追加のペナルティが科せられることに。このままだと背後を走る牧野だけでなく、3番手の坪井にも抜かれる可能性が出て、太田は厳しい立場に置かれることとなった。加えて、タイヤが温まってきた牧野がさらにペースアップ。24周目の130Rで太田を逆転し、再びトップの座を掴みとる。
ハイペースで走る牧野に食らいつき、3位との差を5秒以上に広げたい太田だったが、28周目の2コーナーで2台が絡む接触があり、うち1台がS字コーナー手前でストップ。これを受け、セーフティカーがコースへ。牧野、太田のチームメイトによるワン・ツーで逃げ切りを目論んだチームのシナリオはここで水泡に帰すこととなり、SCランのままレースは31周のチェッカーフラッグを迎えた。
牧野、太田、そして坪井のオーダーでチェッカーを受けたものの、SCがピットロードに入った瞬間、背後のクルマが一斉にフィニッシュラインを目指してなだれ込むという珍しい形でレースが幕を下ろすこととなり、決勝結果に5秒がタイム加算された太田は12位に。牧野、坪井に続き、岩佐が3位表彰台を手にした。第1戦では悔しい結果に終わった牧野は自身通算3勝目を達成。鈴鹿での初勝利に力強く雄叫びをあげた。
2戦とも表彰台に立った岩佐がランキングトップに立つ形で迎える次回大会の舞台は、モビリティリゾートもてぎ。4月19日に第3戦、20日に第4戦が実施され、鈴鹿同様ワンデーレースを2日間にわたって繰り広げることとなる。
【第1戦鈴鹿 予選トップ3】
1.No. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)55’03.054 31L
2.No.1 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOMʼS)+2.681
3.No.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)+2.780