フルスロットル:R34ドラッグモンスターが甦らせる『ワイルド・スピード』の魂
クルマ好きなら誰もが心に刻むアイコニックな1台——その存在はファンダムを超え、文化的な象徴として君臨する。R34日産スカイラインGT-Rがその代表格であることに異論はないだろう。
2000年代に車好きであったなら、あの「ニード・フォー・スピード:アンダーグラウンド」や「ワイルド・スピードX2」、金色のトップシークレットGT-Rや白いマインズGT-Rが240pの画質で暴れ回るYouTube動画を見たことがない、なんてことはないはず。
ミッキー・アンドラーデ率いるThrotlチームは、この懐かしい2000年代の感覚を2024年のチューニング技術とスタイルで見事に再構築し、SEMAショー2024のMeguiar’sブースでこの究極のスカイラインを披露した。
注意:このR34はGT-Rではないが…
正直に言うと、この車は「BNR34 GT-R」ではない。そしてThrotlもその点を隠していない。むしろ1999年に日産の工場から後輪駆動のER34 GT-Tとして生まれたこの車を、ここまで劇的に進化させた技術力を誇っている。
四輪に装着されたカスタムMotegi Racingホイールと力強いPro Street Radialタイヤは、このスカイラインがAWD(四輪駆動)化され、ドラッグレース専用マシンとして本気であることを物語っている。
トランスミッショントンネルはトランスファーケースを収めるために改造され、フロントシャシーもドライブシャフトを収めるために加工済みだ。前輪へのパワーはドラッグスペックの2速Powerglideトランスミッション経由で伝達され、後輪にはPlatinum Racing Products(PRP)製の8.8インチビレットデフと強化ドライブシャフトが力を送る。
ボンネットから飛び出したエキゾースト、ビードロックホイール、そしてリアに装着されたパラシュート。これらはすべて、この車がドラッグレース用に特化している証拠だ。
ボンネットの下には、RB25ブロックを2.6Lにボアアップし、RB26 05Uシリンダーヘッドを搭載したエンジンが鎮座。Garrett G45-1600ターボチャージャーが2.2barのブースト(約32psi)を供給し、現状で1,219馬力を発揮する。CSF Race製ラジエーターが冷却を担い、MoTeCのエンジン管理システムがドライブバイワイヤスロットルを制御し、デジタルダッシュに重要なデータを表示する。もちろんNOSも搭載、大容量ボトルで完備。『ワイルド・スピード』へのオマージュに、NOSなしはあり得ない。
Zestek製ステアリングホイールコントローラーとRywire CANモジュールにより、車両の各種システムを指先で簡単に操作可能。2WD、4WD、パワーレベルの調整や各種走行アシストの切り替えがシームレスに行える。
この車の真の完成形は、PRPが手掛けるRBシリーズの問題点をすべて解消した次世代RBエンジンが搭載されてからだ。この新エンジンはオーストラリアからアメリカに届けられ、量産第一号がこの車に搭載される予定だ。目標馬力は1,400馬力。この高出力に対応するため、車両はガセット付きのフルロールケージ、カーボンファイバーバケットシート、そしてSparco製ハーネスで安全性を確保している。
映画のレプリカ車には賛否が分かれるが、単なる模倣ではなく、インスピレーションを元に元車両を超えた性能を追求するオマージュ車は別物だ。
ThrotlのR34は、チューニング文化の原点に敬意を表しつつ、2024年のチューニングシーンが誇る最先端技術と情熱を詰め込んだ1台だ。