第92回ル・マン24時間、壮絶なアタックを経て6号車ポルシェ963がポールポジションを掴み取る!
第92回ル・マン24時間レースの最終予選が現地時間の13日(木)の夜に行われ、各クラス上位8台がポールポジション争いを繰り広げた。サポートレース中にアクシデントが発生し、ガードレールの修復が必要となってセッション開始がディレイ。また、セッション終盤に赤旗中断も見られたが、残り時間8分弱で再開すると、慌ただしくトップタイムが入れ替わり、6号車のポルシェ963(ケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントール)がトップタイムをマークし、劇的逆転のポールポジションを掴み取っている。
公開車検からパレード、さらにテストデーと日に日にレースモードが高まってきたル・マン。12日(水)からサーキットにおける走行が本格的に始まり、各車がポールポジション獲得を目指し、セットアップを煮詰めていった。
これに先立ち、9日(日)には計6時間の走行枠でテストデーを実施。ここでトップタイムをマークしたのは、6号車だった。これに6号車のシスターカーである4号車が続き、トヨタGR010ハイブリッドを投入するトヨタ勢では、8号車が3番手につけていた。続いて予選、フリー走行が行われた12日(木)になると、天候が晴から曇り空が先行し始める。予選は現地時間午後7時にスタート。気温19度、路面温度29度のコンディションのなか、1時間のセッションが幕を開けた。
全62台、車速が異なる3クラスの車両がコースインしてそれぞれがアタックを開始。まず、この予選で各クラストップ8入りすることが最大の目標となる。というのも、最終的なポールポジションが決まるのは、翌日に開催される”ハイパーポール”でのアタックだからだ。各クラス9位以下の車両はこの予選で順位が確定するが、各クラス上位8台は新たなチャンスを得て、翌実に再度アタックラップへと臨むことができる。それゆえ、アタックセッションは残り10分を切ってから慌ただしく各車が動きを見せ始めた。
チェッカーまで8分あまりという状況のなか、15号車のBMW MハイブリッドV8が3分24秒465をマークして暫定トップへ。それまでトップタイムだった7号車のトヨタGR010ハイブリッドは小林可夢偉がアタックを担当しており、さらなるタイムアップを目指してアタックラップに入っていたが、カーティングコーナーで惜しくもコースアウト。これを受け、セッションは赤旗中断となる。さらに、残り時間が2分27秒だったこともあり、予選はこの赤旗を持って終了扱いに。なお、7号車はこの時点で暫定4番手だったが、赤旗の原因を作ったという理由から全タイム抹消の扱いとなり、クラス最後尾のグリッドが確定する。一方、8号車のトヨタGR010ハイブリッドは、アタック中にトラフィックの影響を受けてタイムアップの好機を逃すことに。結果、11番手に留まり、今年のトヨタは2台揃ってハイパーポールへの出場を逃すという事態になった。一方、トップ15号車に続いて2番手タイムをマークしたのは、2号車のキャデラックVシリーズ.R。これに、50号車のフェラーリ499Pが3番手となった。
迎えた13日(木)。ハイパーポールセッションを前に、まずは3回目のフリー走行が行われた。その後、各クラスのポールポジションを競うセッションを迎えたが、前述のようにサポートレース中に発生したクラッシュの影響を受け、セッションは午後8時35分にスタート。気温20度、路面温度22度のコンディションのもとで30分間のセッションが実施された。
なお、ハイパーカークラスの予選で8位通過を果たした12号車のポルシェ963だが、前日の予選後に行われた2回目のフリー走行中にクラッシュ。モノコック交換を強いられることになり、ハイパーポールの出走を見送ることに。一方、このセッションで使用できるタイヤは2セット。チームによって組み合わせは異なると思われるが、ミディアムとソフトタイヤをそれぞれ準備したチームもあるようだ。
まず、最初のアタックラップで暫定トップタイムをマークしたのは3号車のキャデラックVシリーズ.R。地元ル・マン出身ドライバーのS.ブルデーがアタックをしていることもあり、観客が大きく沸く。さらにその後、各車が2セット目のニュータイヤを投入、改めてアタックラップに向かう。そんななか、15号車のBMW MハイブリッドV8がインディアナポリスのアウト側でコースアウト、グラベルにストップしたため、セッションが赤旗に。当然ながら15号車は再開後の出走は認められず、また全タイムが抹消されることになった。
残り8分弱で再開されたセッションだったが、出走を見送るチームも。しかし、チェッカーが振られるなか、ラストアタックをしていたチームが躍進を見せる。まず、2号車のキャデラックVシリーズ.Rが3分24秒782をマークし、暫定トップに。これでポール確定かと思われたが、その直後、チェッカーを受けた6号車のポルシェ963がさらにタイムを削ってトップを奪取! 大終盤での大逆転となる3分24秒634のタイムを叩き出し、文字通りポールポジションをもぎ取っている。一方、赤旗前に暫定トップだった3号車は、最終的に3番手となった。以下、51号車フェラーリ、50号車フェラーリ、35号車アルピーヌがトップ6に収まる結果になった。
なお、LMP2およびLMGT3クラスに参戦中の日本人ドライバーが所属するチームのなかで、ハイパーポールへの出場を決めたのは、LMP2クラス37号車のオレカ07・ギブソン(宮田莉朋)、さらにLMGT3クラスの82号車シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R(小泉洋史)、そして今回をもってル・マン参戦からの”勇退”を明らかにした星野敏が率いる777号車アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3の3チーム。宮田を除く2選手がアタックを担当し、37号車はクラス6番手、さらにGT3クラスでは777号車が6番手、82号車は7番手という結果になっている。
ドラマチックな展開を見せたハイパーポールの後には、4回目となるフリー走行が1時間にわたって行われたル・マン。このあとは土曜日の決勝スタートを待つのみとなった。天気予報では下り坂という情報が入っているが、どの程度コンディションが変化するのか気になるところ。決勝のスタートは15日(土)の現地時間4時を予定している。
第92回ル・マン24時間レース予選(ハイパーポール)順位(ハイパーカークラスのみ上位3台)
<HYPERCAR>
1.No.6 ポルシェ963(K.エストーレ/A.ロッテラー/L.ファントール)3’24.634
2.No.2 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/A.リン/A.パロウ)3’24.782
3.No.3 キャデラックVシリーズ.R(S.ブルデー/R.バン・デル・ザンデ/S.ディクソン)3’24.816
<LMP2>
1.No.14 オレカ07・ギブソン(PJ.ハイエット/L.デレトラズ/A.クイン)3’33.217
<LMGT3>
1.No.70 マクラーレン720S LMGT3エボ(B.イリーブ/O.ミルロイ/F.シャンドルフ)3’58.120
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)