2024 ル・マン24時間レース - イベント・レースレポート

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2024年6月17日 更新

終盤も雨でひと波乱。戦いを制したのは50号車フェラーリ!

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24時間の長時間レースが残り4分の1となり、依然として先行き不透明な天候に左右される展開となった今年のル・マン。正午からしばらく安定したドライコンディションが確保されたものの、チェッカーが近づくと次第に天候が悪化。最終的に、”雨のル・マン”の接近戦を制したのは、50号車のフェラーリ499P (アントニオ・フォコ/ミゲル・モリーナ/ニクラス・ニールセン)だった。
 

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レース開始から18時間が過ぎ、現地時間の午前10時32分に3回目のSCランが解除。各クラスとも長いSCランでギャップが縮まり、ハイパーカークラスでは2号車の2 キャデラックVシリーズ.Rを先頭に、5号車のポルシェ963、そして8号車トヨタGR010ハイブリッドの3台がトップ3を形成した。一方、スタートではクラス最後尾だった7号車のトヨタは5位まで挽回。ハードプッシュの走りを見せていたが、レース再開から10分もしないうちにペースダウン。突如パワーダウンするトラブルが発生、応急処置として手動でパワーを復活させて走行を続ける。その後も、左前タイヤのパンクに見舞われてイレギュラーのピットインを強いられたが、粘りの走りで周回を重ねていった。
 

正午を過ぎたル・マン。残り4時間に入り、レース序盤ではトップを走行していた83号車のフェラーリがハイブリッド系トラブルでガレージイン。修復叶わず、最終的にガレージのシャッターが下ろされて戦列を離れる。そんななか、トップを走行していた2号車のキャデラックVシリーズ.Rは、降り出した雨とルーティンのピットインのタイミングが見事に合致。ライバルチームがドライタイヤからウエットタイヤへの交換のためにイレギュラーピットインを強いられるのを横目に、しばしトップをキープする走りを見せた。逆に8号車のトヨタはタイヤ交換の際、右フロントタイヤにインパクトレンジが入らず大きくタイムロスを喫したことでライバルの先行を許すことになり、チェッカーまで残り2時間のタイミングで6番手へとポジションを下げる。その後は順調に表彰台圏内で走行を続けていたが、ミュルサンヌコーナーで51号車のフェラーリ499Pとの接触でスピン。グラベルを経由しコースに復帰はできたものの、大終盤に思わぬ形でポジションを下げることとなった。
 

トップ2を形成してチェッカーを目指していた50、51号車のフェラーリだが、51号車はのちに8号車への追突でピットストップ時に5秒停止のペナルティが課せられ、また、トップの50号車は走行中にドアが開くというハプニングが発生。50号車にはピットに戻ってのトラブルシューティングが求められた。2台は慌ただしいレース内容でともにポジションを下げたが、もともとレースペースが良かったこともあり、その後の粘りの走りが結実。50号車はポジションを挽回して再びトップに立つ驚異のパフォーマンスを見せつけた。
 

チェッカーが1時間後に近づくなか、雨の走行が続くも50号車は依然としてトップをキープ。2番手には数多くのアクシデントを乗り越えてペースアップしてきた7号車トヨタが続き、3番手は51号車という形に。最後まで6号車のポルシェが残る表彰台の一角を狙って51号車に迫ったが、結局好機に恵まれることはなかった。トップを走る50号車は、バーチャルエナジータンクの残量が一桁になる窮地に陥るも、見事なマネージメントを見せて午後4時2分にトップチェッカー! 311周を走破し、フェラーリとしてハイパーカークラス2連覇を達成することとなった。
 

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14秒221という僅差で2位に続いたのは、クラス最後尾からスタートした7号車トヨタ。逆境をバネにベストを尽くした結果といえる。3位には、昨年のウィナーである51号車フェラーリ。ポールポジションスタートの6号車ポルシェ963が4位に続き、8号車トヨタは5位でチェッカーを受けた。
 

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このほか、日本人ドライバーが参戦するLMP2クラスでは、レース折り返しから183号車のオレカ07・ギブソンが長くクラストップに立っていたが、残り3時間を過ぎてズルズルと後退。変わって22号車のオレカ07・ギブソンがトップに立ち、そのままクラス優勝を果たした。なお、宮田莉朋がドライブした37号車のオレカ07・ギブソンは、チェッカーまで1時間を切るなか、痛恨のスピン。ガレージに一旦クルマを入れての作業を強いられる。その後はコース復帰を果たしてチェッカーは受けたものの、大終盤で表彰台が手からこぼれ落ちる悔しい結果に甘んじた。
 

LMGT3では、スタートから20時間を前にした時点で濱口弘と佐藤万璃音が出走した95号車のマクラーレン720S LMGT3エボが惜しくもリタイアに。逆に91号車のポルシェ911 GT3 R LMGT3が順調にクラストップを周回して流れもそのままに、クラスウィナーとなっている。また、星野敏がいる777号車のアストン・マーティン・バンテージAMR LMGT3は9位、木村武史の87号車レクサスRC F LMGT3は10位、そして小泉洋史の82号車シボレー・コルベット206 LMGT3.Rは11位でチェッカーを受けることとなった。
 

雨の影響を受けてアクシデントが発生、計3回、およそ7時間近くSCランとなった今年のル・マン。レースが再開すると常に攻防戦が繰り広げられ、最後の最後まで戦いの行方がわからないという緊迫の展開を見せた。また、トップの50号車はチェッカーまで残り10分を迎える中で、バーチャルエナジータンクが示すエネルギー量がカツカツの状態になりながらも、冷静なレース運びでトップ争いをコントロール。昨シーズンからWEC最高峰クラスに復帰し、ル・マンでの過酷な戦いで連勝を遂げたフェラーリの底力を垣間見れたレースでもあった。
 

第92回ル・マン24時間レース最終結果(総合トップ3および各クラストップ)

 
<HYPERCAR>
1.No.50 フェラーリ499P(A.フォコ/M.モリーナ/N.ニールセン)311周
2.No.7 トヨタGR010ハイブリッド(J-M.ロペス/小林可夢偉/N.デ・フリース)+14.221
3.No.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ)+36.730
 

<LMP2>
1.No.22 オレカ07・ギブソン(O.ジャービス/B.ガーグ/N.シーゲル)297周
 

<LMGT3>
1.No.91 ポルシェ911 GT3 R LMGT3(Y.シャヒン/M.シューリング/R.リエツ)281周
 

(TEXT : Motoko SHIMAMURA)



2024年6月16日 更新

レース4分の3を終了、雨の中、長時間のSCで大接戦に

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レース折り返しを前に本格的な雨に見舞われることとなったフランス、ル・マンのサルト・サーキット。第92回ル・マン24時間レースは、折り返しを過ぎてなおSCランが続き、現地時間午前9時を前にようやく再開を迎えた。長くSCランによるレースコントロールが続いたことを受け、スタートから18時間が経過してなお激しいポジション争いを繰り広げている。
 

小雨になり、路面状況がやや改善したかと思いきや、再び降雨になりウエットタイヤを要するという極めて落ち着きのない天候になっている今年のル・マン。長引くSCの走行で燃料が減り、別途SCを投入するという珍しい光景も見られた。ようやく明け方になって少しずつ雨量が減って空も明るくなり始めるなか、依然としてSCランが続いていたが、午前8時を迎える頃には雨雲も消え、コース上に3台いたSCも1台ずつコースを外れていくこととなり、総合トップに立った8号車トヨタGR010ハイブリッドが198周目を走行中に牽引するSCのフラッシュライトが消灯。およそ4時間26分にわたって続いたSCランが終わることとなった。
 

気温13度、路面温度15度と近年のル・マンとしては寒さが先行するコンディション、しかも雨模様というタフな戦いが続くなか、レース再開とともにポジション争いも一層激しくなる。ハイパーカークラスでは8号車と6号車のポルシェ963によるトップ争いが激化。一方、路面コンディションの改善に合わせ、どのタイミングでウエットからドライタイヤへ交換するかも気になるところ。トヨタではひと足先に7号車がスリックタイヤを装着してウエットタイヤの8号車とのタイムを比較。スリックのほうが速くなった段階で8号車をピットインさせ、タイヤ交換を実施した。
 

雲は多いものの、青空も垣間見えるようになったル・マンだったが、午前9時半すぎに3回目のセーフティカーがコースインする。これは、LMGT3クラス車両がバランスを崩してインディアナポリスでコースアウト、車両がひっくり返る事態となったため。幸いドライバーは自力でクルマを降りたが、このSCランはほぼ1時間に及ぶこととなった。
 

度重なるSCランによって各クラスの上位争いは極めて僅差になっているが、レース再開直前に迎えた18時間経過の時点での総合トップは6号車。8号車がこれに続き、2号車のキャデラックVシリーズ.Rが3番手となっている。
 

いよいよ残り時間6時間を切ったル・マン。気になるのは再び天気予報で雨の予報が出ていることだ。近年稀に見る激しいポジション争いが続くスプリントレースのようになっているだけに、午後4時を過ぎてトップでチェッカーを受けるのがどのチームになるのか、最後の最後まで先が読めない。
 

18時間が経過した時点の総合トップ3,および各クラストップは以下のとおり。
 

ル・マン24時間レース途中結果(午前10時・18時間経過/総合トップ3および各クラストップ)気温16度、路面温度16度

 
<HYPERCAR>
1.No.6 ポルシェ963(K.エストーレ/A.ロッテラー/L.ファントール)222周
2.No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)+0.686
3.No.2 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/A.リン/A.パロウ)+2’18.473
 

<LMP2>
1.No.183 オレカ07・ギブソン(F.ペロード/B.バーニコート/N.バローネ)212周
 

<LMGT3>
1.No.87 レクサスRC F LMGT3(木村武史/E.マッソン/J.ホークスワース)201周
 
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)



2024年6月16日 更新

第92回ル・マン、開始6時間以降折り返しまで雨が続く

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6月15日、現地時間午後4時に戦いの幕が切って落とされた第92回ル・マン24時間レース。開始から6時間を過ぎて次第に雨が本降りとなり、セーフティカーランが導入されている。そのなかで、開始から9時間を過ぎた時点で8号車トヨタGR010ハイブリッドが暫定トップに立っている。
 

レース開始から6時間を経過すると、次第に雨脚が強くなったル・マン。そのなかでハイパーカークラスの2台_15号車のBMWと83号車のAFコルセフェラーリがミュルサンヌコーナー手前で接触。トップを走っていた83号車はそのままレース継続が可能だったが、15号車のダメージは大きく、車両回収の対象に。さらには傷めたガードレールを補修することが原則であることから、現地時間午後10時37分、作業のためにレースは大会初となるセーフティカーランが導入された。修復に必要とした時間はおよそ1時間半ほど。日付変更線が変わった深夜0時8分にリスタートを迎えると、83号車がトップのままレース8時間が経過した。
 

天気はその後も不安定な状態が続き、今度は雨が本降りに。ウエットタイヤへといち早く交換したチームがポジションを上げ、ステイアウトを選択したチームは逆に逆転を許すことになった。なお、83号車に対しては、セーフティカー導入の一因となったペナルティが課せられ、30秒のストップ&ゴーの対象となり、6番手まで降格。これを受け、8号車がトップに浮上、6号車ポルシェ、7号車も3番手までポジションアップを果たした。
 

SCがピットに戻りレースが再開、10時間を過ぎるとスリックタイヤでの走行が可能となっていたが、その後、11時間を過ぎた午前3時15分頃から再び雨がポツポツと落ち始める。先んじてトヨタの2台、そしてその間に割って入る6号車ポルシェが揃ってピットに戻り、ウエットタイヤへと交換。コース上では水煙が高く上がるほどのひどい雨へと変化するなか、土砂降り状態へと変わったことから、安全面を考慮し、レースは午前3時44分に今大会2回目のセーフティカーが導入された。
 

結果、レース前半の最後となる12時間目はセーフティカーランのまま終了。まだ夜明けまで少し時間があるなか、バトルなしで周回を重ねる展開に。62台でスタートを切った戦いだが、この時点でリタイアは全クラス合計で8台。LMP2クラスでは、AFコルセの183号車オレカ07・ギブソン、LMGT3ではマンタイ・ピュアレクシングの92号車ポルシェ911 GT3 R がそれぞれトップを走行中となっている。
 

また、日本人が参戦しているチームとしては、LMP2の37号車(宮田莉朋)はクラス2位、LMGT3では、95号車(濱口弘、佐藤万璃音)がクラス4位、87号車(木村武史)が同8位、そして777号車(星野敏)は同14位を走行中だ。
 

レース折り返しあたる12時間が経過した時点の総合トップ3,および各クラストップは以下のとおり。
 

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ル・マン24時間レース途中結果(午前4時・12時間経過/総合トップ3および各クラストップ)気温12度、路面温度14度

 

<HYPERCAR>
1.No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)172周
2.No.6 ポルシェ963(K.エストーレ/A.ロッテラー/L.ファントール)+2.684
3.No.7 トヨタGR010ハイブリッド(J-M.ロペス/小林可夢偉/N.デ・フリース)+2’20.615
 

<LMP2>
1.No.183 オレカ07・ギブソン(F.ペロード/B.バーニコート/N.バローネ)164周
 

<LMGT3>
1.No.92 ポルシェ911 GT3 R LMGT3(A.マリキン/J.シュトーム/K.バハラー)153周
 

(TEXT : Motoko SHIMAMURA)



2024年6月16日 更新

第92回ル・マン24時間、序盤は接近戦続く

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6月15日、WEC_世界耐久選手権第4戦に位置付けされるル・マン24時間レース。101周年を迎え、今年で92回目の開催となる伝統の耐久レースは、薄曇りのなか号砲を迎えた。1周13.6キロ超の長いコースながら、最上位クラスのハイパーカークラスは僅差の戦いが続いている。
 

現地時間午後4時のスタートを控えたフランス ル・マンのサルト・サーキット。正午から15分間のウォームアップ走行が終わり、決勝スタートを待つだけのなか、午後2時には大雨に見舞われた。幸いながら、徐々に天気が好天。強い風も味方してコースはドライアップ。スリックタイヤでのスタートが可能に。しかし、気温は18度、路面温度は20度と肌寒いコンディションでの戦いとなった。
 

今年の栄えあるスターターのゲストとして招聘されたのは、サッカーの元フランス代表のミッドフィルダー、ジネディーヌ・ジダン氏。フォーメーションラップが始まるなか、ハイパークラスではハイパーポールで総合2番手のタイムをマークした2号車のキャデラックVシリーズ.Rが前回第3戦のペナルティを受けて、5グリッド降格が決まっており、クラス7位からのスタートとなっている。
 

スタートこそ混乱はなく、ポールポジションの6号車ポルシェ963を先頭に進んで行ったが、早くもインディアナポリスを前にして50号車のフェラーリ499Pがトップを奪取する。オープニングラップをトップで通過した50号車に続いたのは、6号車。さらに51号車のフェラーリとなったが、ペースの良いフェラーリ勢がその後トップ2を形成した。僚友同士の接近戦を繰り広げるなか、レース開始から40分を過ぎたあたりから最初のルーティンピットインが始まる。各車給油だけのピット作業だったが、トップの50号車はぴっとからの復帰時の作業がアンセーフリリースの判定となり、2回目のピットインで10秒ストップのペナルティを強いられる。しかし、スタートから1時間が迫るなか、再び6号車を捉えてトップを奪還する好走を見せた。
 

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一方、天候は依然として不安定な状態。スタートから1時間半が過ぎると、部分的に雨が落ち始めてワイパーを作動するクルマも出始める。結果、続々と各車ピットに飛び込みウエットタイヤを装着、慌ただしい展開に輪をかけた。ところが、その後、雨は20分強で上がり、ドライタイヤを装着するクルマのタイムがウエットタイヤ勢を上回り始める。すると、またタイヤ交換のためのピットインが続出した。しかし、この”狂騒”を横目に、ウエットコンディションをドライタイヤで走行を続けたフェラーリ勢がトップをキープ。戦略を味方にした形となった。
 

予選では本領発揮といかず、2台ともハイパーポール進出を逃したトヨタ勢。しかし、レースペースには絶対的な自信を見せていたこともあり、徐々にポジションアップを見せる。結果、現地時間午後9時スタートから5時間が経過した時点で、8号車トヨタGR010ハイブリッドが4番手へ、またクラス最後尾からのスタートに甘んじた7号車が5番手までポジションアップを果たしている。
 

レース4分の1に当たる6時間が経過した時点の総合トップ3,および各クラストップは以下のとおり。
 

ル・マン24時間レース途中結果(午後10時・6時間経過/総合トップ3および各クラストップ)気温14度、路面温度17度

 

<HYPERCAR>
1.No.83 フェラーリ499P(R.クビサ/R.シュワルツマン/Y.イェ)96周
2.No.5 ポルシェ963(M.キャンベル/M.クリステンセン/F.マコウィッキ)+49.546
3.No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)+55.603
 

<LMP2>
1.No.37 オレカ07・ギブソン(L.フルクサ/M.ヤコブセン/宮田莉朋)91周
 

<LMGT3>
1.No.92 ポルシェ911 GT3 R LMGT3(A.マリキン/J.シュトーム/K.バハラー)85周
 

(TEXT : Motoko SHIMAMURA)



2024年6月14日 更新

第92回ル・マン24時間、壮絶なアタックを経て6号車ポルシェ963がポールポジションを掴み取る!

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第92回ル・マン24時間レースの最終予選が現地時間の13日(木)の夜に行われ、各クラス上位8台がポールポジション争いを繰り広げた。サポートレース中にアクシデントが発生し、ガードレールの修復が必要となってセッション開始がディレイ。また、セッション終盤に赤旗中断も見られたが、残り時間8分弱で再開すると、慌ただしくトップタイムが入れ替わり、6号車のポルシェ963(ケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントール)がトップタイムをマークし、劇的逆転のポールポジションを掴み取っている。
 

公開車検からパレード、さらにテストデーと日に日にレースモードが高まってきたル・マン。12日(水)からサーキットにおける走行が本格的に始まり、各車がポールポジション獲得を目指し、セットアップを煮詰めていった。
 

これに先立ち、9日(日)には計6時間の走行枠でテストデーを実施。ここでトップタイムをマークしたのは、6号車だった。これに6号車のシスターカーである4号車が続き、トヨタGR010ハイブリッドを投入するトヨタ勢では、8号車が3番手につけていた。続いて予選、フリー走行が行われた12日(木)になると、天候が晴から曇り空が先行し始める。予選は現地時間午後7時にスタート。気温19度、路面温度29度のコンディションのなか、1時間のセッションが幕を開けた。
 

全62台、車速が異なる3クラスの車両がコースインしてそれぞれがアタックを開始。まず、この予選で各クラストップ8入りすることが最大の目標となる。というのも、最終的なポールポジションが決まるのは、翌日に開催される”ハイパーポール”でのアタックだからだ。各クラス9位以下の車両はこの予選で順位が確定するが、各クラス上位8台は新たなチャンスを得て、翌実に再度アタックラップへと臨むことができる。それゆえ、アタックセッションは残り10分を切ってから慌ただしく各車が動きを見せ始めた。
 

チェッカーまで8分あまりという状況のなか、15号車のBMW MハイブリッドV8が3分24秒465をマークして暫定トップへ。それまでトップタイムだった7号車のトヨタGR010ハイブリッドは小林可夢偉がアタックを担当しており、さらなるタイムアップを目指してアタックラップに入っていたが、カーティングコーナーで惜しくもコースアウト。これを受け、セッションは赤旗中断となる。さらに、残り時間が2分27秒だったこともあり、予選はこの赤旗を持って終了扱いに。なお、7号車はこの時点で暫定4番手だったが、赤旗の原因を作ったという理由から全タイム抹消の扱いとなり、クラス最後尾のグリッドが確定する。一方、8号車のトヨタGR010ハイブリッドは、アタック中にトラフィックの影響を受けてタイムアップの好機を逃すことに。結果、11番手に留まり、今年のトヨタは2台揃ってハイパーポールへの出場を逃すという事態になった。一方、トップ15号車に続いて2番手タイムをマークしたのは、2号車のキャデラックVシリーズ.R。これに、50号車のフェラーリ499Pが3番手となった。
 

迎えた13日(木)。ハイパーポールセッションを前に、まずは3回目のフリー走行が行われた。その後、各クラスのポールポジションを競うセッションを迎えたが、前述のようにサポートレース中に発生したクラッシュの影響を受け、セッションは午後8時35分にスタート。気温20度、路面温度22度のコンディションのもとで30分間のセッションが実施された。
 

なお、ハイパーカークラスの予選で8位通過を果たした12号車のポルシェ963だが、前日の予選後に行われた2回目のフリー走行中にクラッシュ。モノコック交換を強いられることになり、ハイパーポールの出走を見送ることに。一方、このセッションで使用できるタイヤは2セット。チームによって組み合わせは異なると思われるが、ミディアムとソフトタイヤをそれぞれ準備したチームもあるようだ。
 

まず、最初のアタックラップで暫定トップタイムをマークしたのは3号車のキャデラックVシリーズ.R。地元ル・マン出身ドライバーのS.ブルデーがアタックをしていることもあり、観客が大きく沸く。さらにその後、各車が2セット目のニュータイヤを投入、改めてアタックラップに向かう。そんななか、15号車のBMW MハイブリッドV8がインディアナポリスのアウト側でコースアウト、グラベルにストップしたため、セッションが赤旗に。当然ながら15号車は再開後の出走は認められず、また全タイムが抹消されることになった。
 

残り8分弱で再開されたセッションだったが、出走を見送るチームも。しかし、チェッカーが振られるなか、ラストアタックをしていたチームが躍進を見せる。まず、2号車のキャデラックVシリーズ.Rが3分24秒782をマークし、暫定トップに。これでポール確定かと思われたが、その直後、チェッカーを受けた6号車のポルシェ963がさらにタイムを削ってトップを奪取! 大終盤での大逆転となる3分24秒634のタイムを叩き出し、文字通りポールポジションをもぎ取っている。一方、赤旗前に暫定トップだった3号車は、最終的に3番手となった。以下、51号車フェラーリ、50号車フェラーリ、35号車アルピーヌがトップ6に収まる結果になった。
 

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なお、LMP2およびLMGT3クラスに参戦中の日本人ドライバーが所属するチームのなかで、ハイパーポールへの出場を決めたのは、LMP2クラス37号車のオレカ07・ギブソン(宮田莉朋)、さらにLMGT3クラスの82号車シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R(小泉洋史)、そして今回をもってル・マン参戦からの”勇退”を明らかにした星野敏が率いる777号車アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3の3チーム。宮田を除く2選手がアタックを担当し、37号車はクラス6番手、さらにGT3クラスでは777号車が6番手、82号車は7番手という結果になっている。
 

ドラマチックな展開を見せたハイパーポールの後には、4回目となるフリー走行が1時間にわたって行われたル・マン。このあとは土曜日の決勝スタートを待つのみとなった。天気予報では下り坂という情報が入っているが、どの程度コンディションが変化するのか気になるところ。決勝のスタートは15日(土)の現地時間4時を予定している。
 

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第92回ル・マン24時間レース予選(ハイパーポール)順位(ハイパーカークラスのみ上位3台)

 

<HYPERCAR>
1.No.6 ポルシェ963(K.エストーレ/A.ロッテラー/L.ファントール)3’24.634
2.No.2 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/A.リン/A.パロウ)3’24.782
3.No.3 キャデラックVシリーズ.R(S.ブルデー/R.バン・デル・ザンデ/S.ディクソン)3’24.816
 

<LMP2>
1.No.14 オレカ07・ギブソン(PJ.ハイエット/L.デレトラズ/A.クイン)3’33.217
 

<LMGT3>
1.No.70 マクラーレン720S LMGT3エボ(B.イリーブ/O.ミルロイ/F.シャンドルフ)3’58.120
 

(TEXT : Motoko SHIMAMURA)



2024年6月13日 更新

2024年 ル・マン24時間レース プレビュー

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さらにタフな戦いへと向かう今年のル・マン
 

耐久レース好きに留まらず、モータースポーツファンであればなにかと気になる6月の耐久レース。それが「ル・マン24時間レース」だ。1年で一番日が長くなる夏至に向かう週末にイベントを開催することで知られる伝統の一戦が、6月15、16日に決勝レースを迎える。昨年、大会が始まってから100周年を迎えた歴史あるレースだが、近年はメーカーが最先端技術を惜しみなく投入して激しいバトルを展開する。果たして、今年はどんな様相を見せるのか。
 

9メーカーが最高峰クラスに参戦する大盛況ぶり

最高峰クラスに「ハイパーカー」がお目見えしたのは、2021年。メーカーが生産するロードカーの”頂点”とでも言おうか。正確には、ル・マン24時間レースを含むWEC_世界耐久選手権における最上位カテゴリーの車両の名称となる。それまでLMP1という呼称でカテゴリーが存在したが、これに取って代わるものが、このハイパーカーだった。初年度からこのカテゴリーで参戦してきたのがトヨタ。それまでル・マンを戦ってきたライバルメーカーたちはしばし”休戦”モードに突入し、トヨタはライバル不在のなかで戦ってきた。だが、翌年にはフランス・プジョーが復活、23年に入るとフェラーリ、ポルシェ、キャデラックが参戦を再開、そして、今年はなんとBMW、ランボルギーニらがデビュー。結果、9メーカー(マニュファクチャラー)が参戦するという最多の状況に。最高峰クラスに23台が勢揃いするとあって、大盛況となっている。
 

WECとしてのシリーズ戦では、このハイパーカークラスとLMGT3でレースを開催しているのだが、これまでWECを”支えてきた”クラスとして、ル・マンではLMP2の存在も欠かせない。いわゆるプライベーターチームの参戦クラスだったLMP2に対し、ル・マンの大会では門戸を広げ、参戦を認めている。現在、LMP2は、ヨーロッパ・ル・マン・シリーズ(ELMS)としてシリーズを開催しているが、今年のル・マンには16台がエントリー。歴史あるレースならではの”懐の深さ”を感じずにはいられない。ちなみに、今年から欧州でレース参戦中の宮田莉朋もル・マンデビューを迎えるひとりだが、彼のチームがこのLMP2に該当する。なお、宮田はトヨタのハイパーカークラスのリザーブドライバーでもあるため、ル・マンでの練習走行では両クラスで走行するという珍しい経験をしており、これもまたル・マンならではのトピックだったかもしれない。
 

こうして、今年はグリッド制限上限となる合計62台という大所帯となるル・マン。去年は、デビューしたばかりのフェラーリがトヨタとの激しい一騎打ちを展開。ル・マン6連覇がかかっていたトヨタにとって伝統あるレーシングチームとの攻防戦は見ごたえたっぷりで、ときに目まぐるしく変わる天候に影響を受けることも少なくない状態だった。結果、50年ぶりにワークスとしてトップクラスに復活したフェラーリに軍配が上がり、”ティフォシ”(フェラーリの熱狂的なファン)が歓喜した。2位に続いたトヨタとの差は、なんと1分21秒強。24時間走り続けた先の差がわずかこれだけとは、多くの人が驚愕したはずだ。かつては24時間という、とてつもなく長くタフな戦いゆえに、一度や二度のトラブルに見舞われてもきちんと修復してコースに復帰すれば表彰台の一角が狙えるものでもあった。しかし、今やル・マンは24時間延々と続くスプリントレースへと姿を替えつつある。いや、もう変わってしまっている。ステアリングを握るドライバーに限らず、レースをオペレートさせる首脳陣含め、参戦チームのスタッフはみな24時間のひりひりとした”スプリントレース”に臨むことになる。
 

ポルシェがテストデーで好走

24時間の戦いを前に、ル・マンは長いレースウィークに入る。まず、先週8、9日の2日間で公開車検を実施。街を上げてのイベントとなり、賑わいを見せるのがル・マンにおけるこの季節の”風物詩”でもある。さらに、9日にはテストデーを実施。ル・マンのサーキットと公道を繋げて1周13km超の特設サーキット(サルト・サーキット)での走行が始まる。3時間のセッションを午前と午後にそれぞれ行ない、速さを見せたのはポルシェ。ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963が前評判どおりのパフォーマンスを披露している。これに僚友の4号車が続き、さらにもう1台のシスターカーである5号車が4番手と3台が上位に並んだ。一方、優勝奪還を目論むTOYOTA GAZOO Racingは、8号車トヨタGR010ハイブリッドがポルシェに続く3番手に。一方、昨年ル・マンを制したフェラーリ勢のAFコルセは50号車フェラーリ499Pが5番手につけている。これを見る限り、ポルシェ、トヨタ、そしてフェラーリによる三つ巴になるのでは、という見方もあるが、ウィングレスで話題を集めた地元フランスチームのプジョー・トタルエナジーズはどうか? テストデーでのタイムは、94号車のプジョー9×8が13番手どまり。今シーズンの車両はウィングを装着するスタイルへと変貌を遂げたが、まだ上位浮上の足がかりは見つかっていないのだろうか? 今年、ル・マンデビューを果たすBMW MチームWRTのBMW MハイブリッドV8が快走することになれば、ますます肩身が狭くなるかもしれない。
 

ル・マンのみのLMP2は、前述のとおり日本人ドライバーの宮田莉朋がクール・レーシングの37号車オレカ07・ギブソンを駆る。すでにTGRのハイパーカーのリザーブドライバーでもある宮田だけに、まずはLMP2でしっかりとル・マンそのものをフルに体験し、ハイパーカーデビュー実現へ大きく歩みを進めてほしい。
 

この他、参戦する日本人ドライバーはハイパークラスにふたり。TGRの小林可夢偉(7号車)と平川亮(8号車)はもうおなじみだろう。残るはLMGT3クラスに5名がエントリーしている。そのなかで日本のチームとして参戦するのは、Dステーション・レーシング。777号車にベテランの星野敏が参戦する。今シーズンからはSUPER GTへも復帰した同チーム。先日の第3戦鈴鹿では見事シーズン初優勝を果たしているだけに、その相乗効果にも期待できるかもしれない。
 

このあとのル・マンは、まず12日(水)から本格的な走行セッションがスタート。午後2時から3時間のフリープラクティス1、その2時間後の午後7時から1時間の予選を行なう。ここで上位に入った車両が、翌日13日(木)の夜に実施するハイパーポールへ進出することができる。その後、ナイトセッションでの走行として、午後10時から2時間のフリープラクティス2を行なう。翌日も午後3時から3時間のフリープラクティス3を行ない、さらに日没が近づく午後8時、いよいよ30分間のハイパーポールを実施する。各クラス上位8台がアタックチャンスに挑み、総合ポールポジションはじめ、各クラスのポールポジションを確定。その後、再びナイトセッションでの走行として、午後10時から2時間のフリープラクティス4を行ない、決勝前の走行セッションが終了する。
 

その後は決勝に受けて、市内で実施されるドライバーズパレードなどのイベントが用意されており、決勝に向けて徐々に街全体が年に一度の”祭典”に向けてヒートアップするという感じだ。決勝は、15日(土)の午後4時にスタート。テストデーが行われたウィークは夏日の好天に恵まれた現地だが、決勝レースに向けて薄曇りが先行気味で、決勝当日の天気はやや下り坂の模様。長いレースだけに天候の変化は避けられないが、できる限り安定した天気のもとでの戦いを期待したい。
 

観戦者もコロナ禍以降、年々増加傾向にあるとされ、前売り券も即ソールドアウト状態と聞く。燃料サーチャージはもとより、航空券の高騰、止まらぬ円安という厳しい状態に置かれる日本のル・マンファンにとっては、現地観戦なぞ”夢のまた夢”になっているのが現状だが、今や参戦するトヨタや専門スポーツチャンネル等がライブ配信で現地のレース状況を刻一刻と伝えてくれるため、情報収集にはさほど困らない。7時間の時差を上手くやりくりして、タフな戦いの行方を見守ってみよう!
 
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)

 
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