スーパーフォーミュラ第7戦もてぎ、野尻が開幕戦以来の勝利達成!
8月20日、酷暑の中、栃木・モビリティリゾートもてぎにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦の決勝レースが行われた。37周で競うレースは、スタート直後に多重クラッシュが発生する波乱の幕開けとなり、その後も混乱を含む荒れた展開となったが、ポールポジションから好スタートを切ったNo. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)が理想的なレース運びを見せて優勝。開幕戦以来となる勝利を手にしている。
厳しい暑さが続いたレースウィーク。決勝日を迎えたもてぎは強い日差しが照りつけ、決戦を目前に、気温は33度、路面温度は46度とタフなコンディションとなった。その中で、ポールシッターの野尻はクリアスタートを決めたが、自身キャリアハイの予選2位につけていたNo. 6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)はまさかのエンジンストール。一気に後続車に飲み込まれてしまう。さらに、ポイントランキング暫定トップ、予選8番手から追い上げを狙っていたNo.37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)も出遅れを喫してしまった。
一方、野尻に続いたのは予選3番手のNo.15 リアム・ローソン(TEAM MUGEN)。2コーナーまでに野尻と横並びになって3コーナーへと向かったが、ローソンがアウト側へと大きくはらみ、縁石にタイヤを落とした勢いで挙動を乱してスピン。回転しながらコース中央近くへ戻ったことで、後続車がパニック状態に。これでNo.19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、No.5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、No.50 松下信治(B-Max Racing Team)の3台が次々と接触。中でも、関口と牧野の車両は宙を舞うように回転、ともに大きなクラッシュとなる。幸い、ドライバー2名に大きな怪我はなかった。
この多重クラッシュを受けてレースは赤旗中断に。また、車両回収やコース設備の安全確保の確認などで長い時間を要し、午後3時50分にセーフティカー先導によるリスタートを迎える。一方、ローソンはダメージを受けながらもピットへと帰還、中断の最中にピットで修復作業が着々と進められ、ピットスタートを果たしている。その後もペース良く周回を重ねることはできたが、赤旗中のピット作業に対してペナルティが科されたため、ポイント圏外で戦いを終えている。
レースは、セーフティカーによる2周の先導を経て、4周目から再開。野尻を先頭に、No.53 大湯都史樹(TGM Grand Prix)、さらにスタート直後の混乱をうまくくぐり抜けたNo.20 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、No.7 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)、No.64 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、No.65 佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)がトップ6を形成。今季初優勝を狙う大湯は野尻をマークする走りを見せたが、じわりじわりとその差を広げられてしまう。そんな中、ルーティンのピット作業が可能となる10周が終了。このタイミングで大湯が勝負をしかけるように真っ先にピットインを敢行。これに3台が続いたが、うち、ピットを離れようとした佐藤とピットへと戻ってきた太田が接触。両車ともクルマにダメージを負い、最終的には戦列を離れる結果に終わった。
スタート直後から落ち着きなく混乱が続く展開は、その後もあちこちに”飛び火”。3番手にポジションを上げた小林だったが、ピット作業で右リアタイヤ交換に手間取り、ポジションダウン。またコース上では「V字コーナーあたりで降雨」との情報が入り、ウエット宣言が出されたが、その中でも動じることなく圧巻の走りを見せたのが野尻。先にピット作業を済ませ、見えない好敵手となった大湯とのタイム差を意識しつつ周回、25周終わりでピットにクルマを戻すと、待ち構えたスタッフは7.2秒で作業を完遂。見事大湯の前でコース復帰を果たし、逆転の隙を与えなかった。一方、野尻の背後にいた平川は26周終わりでピットイン。右リアタイヤ交換でミスが生じて9.4秒と出遅れ、大湯の背後でコース復帰となる。すると、コース上では、ひと足早くピット作業を済ませていた山本とテール・トゥ・ノーズの接近戦となり、2台は90度ターンで接触。イン側にいた山本は左フロントの足回りに大きなダメージを負い、先の1コーナーでコースを逸れてクルマを止めてしまった。
終盤に入ると、トップ野尻と2番手大湯との差は開く一方。逆に、山本との接触でハーフスピンを喫したものの、ダメージはなかった3番手の平川が大湯との差を縮めていく。すると、33周目のS字コーナーで一気に仕留め、鮮やかな逆転劇を披露。その後もペース良くトップの野尻を追ったが、時すでに遅し。結果、野尻が待望の今季2勝目を上げてチェッカーを受け、現役ドライバーとしては最多の通算10勝目を挙げている。前日のポールポジションと合わせて、今大会で13点を一気に計上した野尻。ポイントランキングは3位と変わらないものの、2番手ローソンがノーポイントで終わったため、その差は2点まで縮まることに。2位には平川が続き、3位に続いた大湯は、今シーズン初の表彰台に上がった。4位には宮田が続き、前日の予選後にはローソンと同ポイントとなっていたが、再び8点差でランキングトップに立つこととなった。
ついに最終大会鈴鹿に向かう今シーズンのスーパーフォーミュラ。9月はレース開催がなく、10月28、29日に最終決戦を迎える。3連覇がかかる野尻が大逆転を見せるか、暫定トップの宮田がそのまま逃げ切るのか。あるいは、虎視眈々と王者を狙うローソンが意地を見せるのか。どのようなドラマになるか、期待は膨らむばかりだ。
第7戦モビリティリゾートもてぎ・決勝結果 トップ3
1.No.1 野尻智紀(TEAM MUGEN)1H31’13.699 37Laps
2.No.20 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)+7.439
3.No.53 大湯都史樹(TGM Grand Prix)+15.456