100周年記念大会を制したのは、50年ぶり最高峰参戦復帰のフェラーリ!
100年前に記念すべき第1回大会が開催されたル・マン24時間レース。曇天模様のなかで10日土曜日の現地時間午後4時に戦いが幕を開けると、途中2度にわたり激しい雨となり、荒れたコンディションへと変貌。コースアウト、クラッシュと波乱に次ぐ波乱の展開が続き、まさに”耐える”戦いとなった。そのなかで3分の2を過ぎた16時間後にトップを奪取したNo.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ)が、No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)とのタフなバトルを戦い抜いてトップでチェッカー。今シーズン、ハイパーカークラスにデビューしたばかりのフェラーリ499Pが勝利の美酒を味わうこととなった。
レース終盤、51号車フェラーリと8号車トヨタは同一周回にピットイン、相手を牽制しながらレースの主導権を巡る戦いを繰り広げた。追いかける8号車が差を縮める中、18時間が経過した255周目のルーティンピットインを終えた51号車にアクシデントが発生した。ドライバー交代、給油、タイヤ交換のフルサービスを終えてピットを離れようとしたが、なんとエンジンがかからない。再起動してようやくエンジンがかかり、ピットを離れたが、同じタイミングでピット作業を終えた8号車にトップを奪われてしまった。だが、その後、ペースに勝る51号車は再び首位を奪還、残り3時間を切ってなお、2台による激しいトップ争いが続いた。
逆転を目指すトヨタはペースアップで猛追するハートレーが4スティント目を敢行、給油とタイヤ交換を済ませて再びトップ争いに向かった。一方、その翌周にピットインした51号車はドライバー交代を含むフルサービスを行なう。これで2台の差は11〜12秒まで縮まった。その後、チェッカーまで2時間を切った時点でルーティンのピットインが行なわれ、8号車は311周終わりでハートレーから平川へとスイッチするフルサービスを行なう。対する51号車は給油のみで応戦、緊迫した状況となった。だが、312周目のアルナージュを走行中だった平川は進入のブレーキングでリヤがロックし、痛恨のスピン! マシンの前後を破損するアクシデントを喫してしまう。追い上げの中で痛手を負うことになり、ピットインでの修復をわずか2分ほどで終えたが、2台の差は3分近くまで広がってしまった。
チェッカーまで残り1時間強、有利な位置に立った51号車がフルサービスのピットイン。残り30分の時点で2番手の8号車平川は毎周3秒程度タイムを縮める力走を見せ、プレッシャーをかけ続ける。さらにチェッカーまで残り24分の時点で最後のルーティンピットを行なった51号車には再びエンジンストールのハプニングが発生。初期化の作業を伴う”リスタート”に時間を要したことで、8号車とのギャップがさらに縮まり、55秒弱の差になった。しかし、のちに8号車も給油作業が控えており、337周終わりでピットへ。残り10分を切る頃には2台の差はおよそ1分44秒。ステアリングを握る平川は最後の最後まで諦めずに前を追ったが、惜しくもトップには手が届かず。連覇が断たれた。これにより、半世紀ぶりのトップクラス、ワークス参戦で臨んだフェラーリがトヨタの6連覇を阻止して総合優勝を達成。2位8号車に続いて3位でチェッカーを受けたのは、6番手からスタートを切り、レース折返し時点で3番手に浮上すると、その後も大きなトラブルなく着実なレース運びを見せた2号車のキャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/A.リン/R.ウエストブルック)が手にしている。
LMP2では、レース折返し後の13時間目にクラストップに立ったNo.34 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/A.コスタ/F.シェーラー)がその後もクラストップを死守。一方で、2番手にはNo.41 オレカ07・ギブソン(R.アンドラーデ/L.デレトラズ/R.クビサ)が僅差で猛追。残り1時間を切ってなお13〜14秒差のままだったが、最後まで2台の差は変わることなくこのままチェッカー。34号車が薄氷の勝利に歓喜した。
また、LMGTE Amクラスは終盤、3人の女性ドライバーで構成するNo.85 ポルシェ911 RSR-19(S.ボビー/M.ガッティン/R.フレイ)が一時トップに立つ躍進を見せたが、後続との激しいバトルにより4位へとドロップ。残り3時間の時点でクラストップに立ったNo.33 シボレー・コルベットC8.R(N.キャツバーグ/B.キーティング/N.バローネ)が安定感たっぷりのレース運びを味方にしてトップをキープ。2位との差を大きく広げる形で勝利している。
この他、日本人ドライバーが参戦したクルマのうち、18時間経過後もレースを続けていたケッセル・レーシングのNo.57 フェラーリ488 GTE Evo(木村武史/スコット・ハファカー/ダニエル・セラ)は、タイヤトラブルが原因で253周目にクラッシュ。修復叶わずリタイヤに。一方、同じレーシングチームのNo.74 フェラーリで参戦したケイ・コッツォリーノ/辻子依旦/横溝直輝の3人は、コッツォリーノ以外のふたりがル・マン初参戦ながら奮闘。クラス9位で完走を果たした。
なお、特別枠での参戦となったNASCARのNo.24 シボレー・カマロZL1(J.ジョンソン/M.ロッケンフェラー/J.バトン)は、速さを遺憾なく発揮するだけでなく、安定感ある走りを一貫して続けて285周を走破している。
半世紀ぶりのワークスチーム参戦により、最高峰カテゴリーで覚醒したフェラーリ。トヨタの6連覇を阻止し、ハイパーカーでのル・マン初優勝を達成した。来シーズンからは、さらにメーカーによる参戦が増えまさに”群雄割拠”となるだけに、このル・マンも24時間レースとは思えないほどの緊迫した戦いが続くことだろう。
第91回ル・マン24時間レース最終結果(総合トップ3および各クラストップ)
HYPERCAR
1.No.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ) 24H00’18.099 342周
2.No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)+1’21.793
3.No.2 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/A.リン/R.ウエストブルック)341周
LMP2
No.34 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/A.コスタ/F.シェーラー)328周
LMGTE Am
No.33 シボレー・コルベットC8.R(N.キャツバーグ/B.キーティング/N.バローネ)313周
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)