2023 ル・マン24時間レース - イベント・レースレポート

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2023年6月12日 更新

100周年記念大会を制したのは、50年ぶり最高峰参戦復帰のフェラーリ!

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100年前に記念すべき第1回大会が開催されたル・マン24時間レース。曇天模様のなかで10日土曜日の現地時間午後4時に戦いが幕を開けると、途中2度にわたり激しい雨となり、荒れたコンディションへと変貌。コースアウト、クラッシュと波乱に次ぐ波乱の展開が続き、まさに”耐える”戦いとなった。そのなかで3分の2を過ぎた16時間後にトップを奪取したNo.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ)が、No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)とのタフなバトルを戦い抜いてトップでチェッカー。今シーズン、ハイパーカークラスにデビューしたばかりのフェラーリ499Pが勝利の美酒を味わうこととなった。
 

レース終盤、51号車フェラーリと8号車トヨタは同一周回にピットイン、相手を牽制しながらレースの主導権を巡る戦いを繰り広げた。追いかける8号車が差を縮める中、18時間が経過した255周目のルーティンピットインを終えた51号車にアクシデントが発生した。ドライバー交代、給油、タイヤ交換のフルサービスを終えてピットを離れようとしたが、なんとエンジンがかからない。再起動してようやくエンジンがかかり、ピットを離れたが、同じタイミングでピット作業を終えた8号車にトップを奪われてしまった。だが、その後、ペースに勝る51号車は再び首位を奪還、残り3時間を切ってなお、2台による激しいトップ争いが続いた。
 

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逆転を目指すトヨタはペースアップで猛追するハートレーが4スティント目を敢行、給油とタイヤ交換を済ませて再びトップ争いに向かった。一方、その翌周にピットインした51号車はドライバー交代を含むフルサービスを行なう。これで2台の差は11〜12秒まで縮まった。その後、チェッカーまで2時間を切った時点でルーティンのピットインが行なわれ、8号車は311周終わりでハートレーから平川へとスイッチするフルサービスを行なう。対する51号車は給油のみで応戦、緊迫した状況となった。だが、312周目のアルナージュを走行中だった平川は進入のブレーキングでリヤがロックし、痛恨のスピン! マシンの前後を破損するアクシデントを喫してしまう。追い上げの中で痛手を負うことになり、ピットインでの修復をわずか2分ほどで終えたが、2台の差は3分近くまで広がってしまった。
 

チェッカーまで残り1時間強、有利な位置に立った51号車がフルサービスのピットイン。残り30分の時点で2番手の8号車平川は毎周3秒程度タイムを縮める力走を見せ、プレッシャーをかけ続ける。さらにチェッカーまで残り24分の時点で最後のルーティンピットを行なった51号車には再びエンジンストールのハプニングが発生。初期化の作業を伴う”リスタート”に時間を要したことで、8号車とのギャップがさらに縮まり、55秒弱の差になった。しかし、のちに8号車も給油作業が控えており、337周終わりでピットへ。残り10分を切る頃には2台の差はおよそ1分44秒。ステアリングを握る平川は最後の最後まで諦めずに前を追ったが、惜しくもトップには手が届かず。連覇が断たれた。これにより、半世紀ぶりのトップクラス、ワークス参戦で臨んだフェラーリがトヨタの6連覇を阻止して総合優勝を達成。2位8号車に続いて3位でチェッカーを受けたのは、6番手からスタートを切り、レース折返し時点で3番手に浮上すると、その後も大きなトラブルなく着実なレース運びを見せた2号車のキャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/A.リン/R.ウエストブルック)が手にしている。
 

LMP2では、レース折返し後の13時間目にクラストップに立ったNo.34 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/A.コスタ/F.シェーラー)がその後もクラストップを死守。一方で、2番手にはNo.41 オレカ07・ギブソン(R.アンドラーデ/L.デレトラズ/R.クビサ)が僅差で猛追。残り1時間を切ってなお13〜14秒差のままだったが、最後まで2台の差は変わることなくこのままチェッカー。34号車が薄氷の勝利に歓喜した。
 

また、LMGTE Amクラスは終盤、3人の女性ドライバーで構成するNo.85 ポルシェ911 RSR-19(S.ボビー/M.ガッティン/R.フレイ)が一時トップに立つ躍進を見せたが、後続との激しいバトルにより4位へとドロップ。残り3時間の時点でクラストップに立ったNo.33 シボレー・コルベットC8.R(N.キャツバーグ/B.キーティング/N.バローネ)が安定感たっぷりのレース運びを味方にしてトップをキープ。2位との差を大きく広げる形で勝利している。
 

この他、日本人ドライバーが参戦したクルマのうち、18時間経過後もレースを続けていたケッセル・レーシングのNo.57 フェラーリ488 GTE Evo(木村武史/スコット・ハファカー/ダニエル・セラ)は、タイヤトラブルが原因で253周目にクラッシュ。修復叶わずリタイヤに。一方、同じレーシングチームのNo.74 フェラーリで参戦したケイ・コッツォリーノ/辻子依旦/横溝直輝の3人は、コッツォリーノ以外のふたりがル・マン初参戦ながら奮闘。クラス9位で完走を果たした。
 

なお、特別枠での参戦となったNASCARのNo.24 シボレー・カマロZL1(J.ジョンソン/M.ロッケンフェラー/J.バトン)は、速さを遺憾なく発揮するだけでなく、安定感ある走りを一貫して続けて285周を走破している。
 

半世紀ぶりのワークスチーム参戦により、最高峰カテゴリーで覚醒したフェラーリ。トヨタの6連覇を阻止し、ハイパーカーでのル・マン初優勝を達成した。来シーズンからは、さらにメーカーによる参戦が増えまさに”群雄割拠”となるだけに、このル・マンも24時間レースとは思えないほどの緊迫した戦いが続くことだろう。
 

第91回ル・マン24時間レース最終結果(総合トップ3および各クラストップ)

HYPERCAR
1.No.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ) 24H00’18.099 342周
2.No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)+1’21.793
3.No.2 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/A.リン/R.ウエストブルック)341周
 

LMP2
No.34 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/A.コスタ/F.シェーラー)328周
 

LMGTE Am
No.33 シボレー・コルベットC8.R(N.キャツバーグ/B.キーティング/N.バローネ)313周
 
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)



2023年6月11日 更新

第91回ル・マン24時間、朝を迎え天気が回復。トップは51号車フェラーリ

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突如として降り始めた雨に翻弄されることが多く、レース中は多くのアクシデントが発生し、いつになく波乱の多い展開が続く100周年記念大会のル・マン24時間レース。不安定な天候に、夕日はもとより朝日も顔を出さず、”ル・マン名物”はお預けとなったが、レースそのものもまだ不安要素を残しながらスタートから18時間が経過し、レースの4分の3を終えることになった。
 

去年は比較的”静かな”展開が長く続いたが、今年は真逆とも言える慌ただしい状況が多く、落ち着きのないレースとなっている。ハイパーカークラスに50年ぶりにメーカーとして復帰したフェラーリ。開始から10時間を前にポールポジションスタートの50号車がラジエター交換を強いられ、ポジションダウン。代わって”シスターカー”である51号車が安定した速さを見せてレース終盤に入っている。一方、そのフェラーリとガチンコ勝負を展開しているのがトヨタ。しかしながら、開始から8時間目前に7号車が後続車から追突を受け、不運のリタイヤに追い込まれたことから、8号車1台が孤軍奮闘の戦いを続けている。
 

夜明けを前に少し雨模様になったこともあってか、朝日にも恵まれず曇天の朝を迎えたル・マン。レースは15時間を過ぎて真っ先に200周目を周回し終えたのは8号車で、ちょうど平川がドライブしていたときだった。その後、207周目にはルーティンのピットインを実施。ピット前に用意されたフロントカウルの交換作業に取り掛かったため、同一周回にピットに戻ってドライバー交代した51号車には先行を許すことに。これを機に51号車はペースアップを見せて、8号車をじわりじわりと引き離しにかかる。次の219周でもピット作業内容が違ったこともあり、さらに51号車のリードが広がった。
 

その後、フェラーリはや早めのタイミング_11周のスティントでピットイン。それまで同一周回でのピットインをしていた8号車もこれに順応。ピットに向かうとともにドライバー交代を行なった。
 

一方、朝を迎えるにつれて各クラスでもトラブルに見舞われ戦列を離れるクルマが現れ、ハイパーカークラスでは4号車ヴァンウォール・バンダーベル680がエンジンブローに見舞われ、コースサイドに車両を止めてリタイヤを強いられている。
 

LMP2さらにLM GTE Amクラスの上位争いでも同一ラップでの攻防戦が続いた。P2は事実上、34号車と41号車が一騎打ち。また、Amクラスは上位7台が同一周回でバトルを展開。女性ドライバー3人で挑んでいる85号車ポルシェ911 RSR-19が18時間目突入を前にして、クラストップへと浮上するなど、終盤に向けて激しいポジション争いになることが予想される。一方、日本人選手の星野敏と藤井誠暢がドライブする777号車アストンマーティンはマシントラブルにより、コースサイドでストップ。フリープラクティス1回目に大クラッシュを喫するも、決勝出走が叶って粘り強く周回を重ねてきたが、足回りのトラブルが酷くなり、レース続行ならず。惜しくもリタイヤとなってしまった。
 

18時間経過後の総合トップ3、および各クラストップは以下のとおり。
 

ル・マン24時間レース途中結果(6月11日午前10時・18時間経過/総合トップ3および各クラストップ)

HYPERCAR
1.No.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ) 18H01’26.226 248周
2.No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)+1’00.229
3.No.2 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/A.リン/R.ウエストブルック)+3’09.332
 

LMP2
No.34 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/A.コスタ/F.シェーラー)238周
 

LMGTE Pro
No.25 アストンマーティン・バンテージAMR(A.アル・ハーシー/M.ディナン/C.イーストウッド)227周
 
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)



2023年6月11日 更新

第91回ル・マン24時間、12時間を前に7号車トヨタが不運のリタイヤ

レース開始序盤から天候悪化によるアクシデントで荒れ模様の展開となっている100周年記念大会のル・マン24時間レース。激しい雨が一旦落ち着いたものの、その後も現地時間の夜10時、スタートから6時間が経過した頃になると、再び不安定な天候に変わり雨が降り始めた。
 

瞬く間に本降りとなった雨になり、足元をすくわれる車両が続出、単独スピンでクラッシュしてボディを損傷するなど、落ち着かない展開となる。なかでもLMP2トップを快走していたNo.28 オレカ07・ギブソンがテルトルルージュでクラッシュ、No.85 オレカ07・ギブソンにトップが変わっている。その後、雨は小一時間ほどで上がり始め、ハイパーカークラスの中で真っ先に50号車フェラーリがウェットからドライへとタイヤ交換を実施、一方で75号車のポルシェはマシントラブルに見舞われ、レースを断念。最高峰クラス初のリタイヤとなった。また、51号車フェラーリはピットアウトの周、アウトラップ中の第1シケインでスピンを喫し、5番手にダウン。これでついに94号車のプジョーがトップに躍り出た。
 

状況が慌ただしく変化する展開となった今年のル・マン。そのなかでレース開始から8時間を迎えたばかりのテルトル・ルージュ入り口で多重クラッシュが発生、ここでまさかの事態が起こってしまった。クラスが異なる車両3台による接触が起こったのだが、そのうちの1台が7号車のトヨタだったのだ。LMP2車両に追突されるという”不意打ち”に遭った7号車はなんとか再スタートするも、スピードはなくユノディエール付近で停止してしまう。リヤタイヤと足回りを損傷した7号車のドアが開き、降りてきたのは小林可夢偉。「どうすることもできなかった。純粋に運がなかった」と、TV中継で目線を落としながら悔しげな表情を見せていた。なお、この多重クラッシュにより、レースは3度目のセーフティカーがコースイン。修復まで1時間を要し、レース開始から9時間17分後にリスタートを迎えることになる。
 

また、開始10時間を目前にして、4番手を走行だった50号車フェラーリがピットイン。損傷したラジエターの修復に着手したことで6周遅れになってしまう。一方、このタイミングでルーティンのピットインを行なった8号車が94号車を攻略してのちにトップへと返り咲き。開始から11時間をすぎるとトップ8号車に51号車が僅差で続き、94号車が3番手というトップ3を構築することになった。
 

しかし、まもなくレース折り返しの12時間を迎えるというタイミングで94号車が第1シケインでタイヤバリアにヒット。このアクシデントで右フロントを大破したがスロー走行ながら自力でピットへの帰還は叶った模様だ。
 

例年以上に大荒れのル・マンは12時間を経過。トップは再び51号車の手にわたり、これを約4秒差で8号車が猛追。さらに2号車キャデラックが3番手に浮上している。
 

12時間経過後の総合トップ3、および各クラストップは以下のとおり。
 

ル・マン24時間レース途中結果(6月11日午前4時・12時間経過/総合トップ3および各クラストップ)

HYPERCAR
1.No.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ) 12H01’46.510 155周
2.No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)+3.701
3.No.2 キャデラックVシリーズ.R(E.バンバー/A.リン/R.ウエストブルック)+1’00.422
 

LMP2
1.No.30 オレカ07・ギブソン(N.ジャニ/R.ビンダー/N.ピノ)149周
 

LMGTE Am
1.No.56 ポルシェ911 RSR-19(PJ.ハイエット/G.ジャネット/M.カイローリ)143周
 
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)



2023年6月11日 更新

第91回ル・マン24時間、降雨で序盤は荒れた展開に

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6月10日、WEC_世界耐久選手権第4戦として開催されているル・マン24時間レース。今年は初開催から記念すべき100周年を迎える伝統の一戦は、例年を遥かに超える盛り上がりを見せている。一方、イベントスタート時から快晴に恵まれていた天気が決勝になって急転。雨模様のなかで戦いの幕が上がり、序盤から雨の洗礼を受ける展開となっている。
 

昨年、最高峰のハイパーカークラスに参戦した車両はわずか5台。ル・マンならではの”メーカー参戦の盛衰”を具現化したような状況だったが、100周年記念大会に集結した車両は16台! 話題沸騰になったのは言うまでもない。午後4時からのスタートを前に、正午から始まった15分間のウォームアップ走行では雨がポツポツと降っていた。また、気温は21度、路面温度は26度どまりに。夏日のような強い日差しが続いたル・マンのレースウィークで初の雨がどんな影響をもたらすのか、急に”暗雲立ち込める”コンディションに変わってしまった。かろうじてスタートセレモニー中は雨も止み、曇天のなかでグリッド上にウェットタイヤを慌ただしく持ち込むスタッフの姿も見受けられたが、なんとか雨にならずに持ちこたえ、ウェット宣言下での号砲となった。
 

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ポールポジションのNo.50 フェラーリ499P(A.フォコ/M.モリーナ/N.ニールセン)を先頭に、予選2位の僚友51号車(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ)を、予選3位のNo.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)がパス。その勢いでポールの50号車フェラーリをも逆転し、インディアナポリス進入を前にトップを奪取してみせた。一方、予選5位の7号車トヨタ(M.コンウェイ/小林可夢偉/J-M.ロペス)も2つポジションを上げて3番手に。ライバル勢がミディアムタイヤでスタートしたのに対し、トヨタ勢がソフトタイヤを選択したことが奏功したようだ。
 

総合トップがポジションを入れ替えて走るなか、後続では早くも激しいクラッシュが発生する。No.311 キャデラックVシリーズ.Rが第1シケインでクラッシュ。早速セーフティカーが導入され、スタートから43分ほどの時点でレースが再開する。このタイミングで7号車トヨタがインディアナポリス手前の右コーナーで50号車フェラーリ攻略に成功、ワンツー体制を築いたが、50号車も諦めず、バトルを繰り広げた。その後は後続の50号フェラーリや75号車のポルシェなども加勢する形で攻防戦を展開。1時間が経過する頃には、トップ8号車トヨタに、51号車フェラーリ。7号車トヨタ、75号車ポルシェが続いた。
 

決勝初のルーティンピットはレース開始から1時間を過ぎた頃から本格的に始まった。その後もコースのあちこちでクラッシュする車両が続いたが、開始から3時間を前にポルシェコーナーあたりから雨が降り始める。10分もしないうちに土砂降りとなった雨の影響でコース上は”カオス”に。川と化すなかで次々と足元をすくわれてスピンを誘発。セーフティカーがコースインすることとなった。だが、ステイアウトでスリックタイヤのまま周回するクルマにとっては波乱の様相となり、結果としてウェットタイヤへの交換を余儀なくされる。雨はその後、ポルシェコーナーからユノディエールへと”移行”。小康状態となった雨とコースコンディションを見極め、レース4時間経過を前にスリックへとタイヤを戻すチームが現れた。
 

そのなかで、レースはようやくスタートから4時間18分経過をもって再開となり、その後もFCY宣言はじめ、各車コース上でのトラブル等でイレギュラーのピットインなどが見られたが、フェラーリは50、51号車としてワンツー体制をキープし、スタートから5時間を経過した時点で揃ってルーティンのピットインを実施。僅差で周回を続けた2台は、のちに51号車がトップを奪取、75号車ポルシェが2台のフェラーリに割って走る好走を見せている。なお、トヨタ勢は8号車が6位、7号車が7位で周回が続いている。
 

6時間経過後の総合トップ3、および各クラストップは以下のとおり。
 

ル・マン24時間レース途中結果(午後10時・6時間経過/総合トップ3および各クラストップ)

HYPERCAR
1.No.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ)75周
2.No.75 ポルシェ963(F.ナッセ/M.ジャミネ/N.タンディ)+6.321
3.No.50 フェラーリ499P(A.フォコ/M.モリーナ/N.ニールセン)+9.721
 

LMP2
1.No.34 オレカ07・ギブソン(J.スミエコウスキー/A.コスタ/F.シェーラー)72周
 

LMGTE Am
1.No.66 フェラーリ488 GTE Evo(T.ノイバウアー/L.プレッテ/G.ペトロベッリ)69周
 
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)
 

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2023年6月9日 更新

第91回ル・マン24時間、今季から参戦のNo.50 フェラーリ499Pが最速タイムをマーク!

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第1回大会から今年で100周年を迎えた伝統の耐久レース、ル・マン24時間レース。公開車検、テストデーを経て、お祭りムードがますますヒートアップするなか、7日(水)からフリー走行および予選が始まった。8日(木)にはポールポジションを確定する「ハイパーポール」が行なわれ、今シーズンから世界耐久レース(WEC)の最高峰クラス”ハイパークラス”に参戦するフェラーリ・AFコルセの50号車をドライブするA.フォコが最速タイムとなる3分22秒982をマークし、記念すべき大会のポールポジションを手にした。
 

ル・マン市街地で盛り上がったイベントを経て、4日に行なわれたテストデーでは、フェラーリ・AFコルセの50、51号車が午前と午後のセッションでそれぞれトップタイムを分け合うなど、揃って好調の兆しを見せていた。予選を含む公式走行スケジュールが始まったのは、7日。現地時間午後2時からのフリープラクティス1回目になると、トヨタ・ガズー・レーシングの7、8号車の2台がペースアップ。8号車、7号車の順でワン・ツーを形成。午後7時からの予選に向けていい流れを掴んだようだった。
 

WECで採用されている予選方法は、日本のSUPER GTにおけるノックアウト予選と似ている。午後7時からの1時間のセッションで各クラス上位8台ずつが翌日のハイパーポールへ進出することになり、9番手以下はこの予選セッションをもってグリッドが確定する。なお、ハイパークラスでは今年出場台数が増えており、ハイパーポール進出を目指してタフなポジション争奪戦になっている。そんななか、開始ほどなくしてセッションは赤旗中断に見舞われ、その後もクリアコンディションの確保が難しい状況が続いた。
 

チェッカーまで残り20分、序盤に7号車のアタッカー、小林可夢偉がマークした暫定トップタイムを50号車が破ってトップを奪取。すると僚友の51号車がさらにタイムアップ、だが50号車が再びトップを奪還する走りとなり、チーム内で激しいトップ争いが繰り広げられた。一方、コース上はセッション終盤になってスローゾーンが導入されるなどコース全域でグリーンの状態を確保することが難しくなる。結果、アタック可能となったのはチェッカー5分強という段階であったため、最終盤でのタイム更新には至らず、フェラーリ2台がワン・ツーを取り、7号車、8号車のトヨタがこれに続いた。さらに5号車ポルシェ、75号車ポルシェ、3号車キャデラック、2号車キャデラックまでがハイパーポールへ進出することとなったが、93、94号車のプジョー9X8は、ともにノックアウト敗退が決定。地元ファンにとってはため息が出る結果となった。
 

予選後は、事前のテストデーを通じてはじめてとなるナイトセッションを実施。開始時点ではまだ日没直後のためほんのりとした明るさが残る状況だが、午後10時から深夜0時までの2時間にわたって走行が続いた。
 

迎えた8日も快晴に恵まれたル・マン。まず午後3時から3時間のフリープラクティス3回目が行なわれ、その2時間後の午後8時には各クラスポールポジションを目指す最終予選「ハイパーポール」が幕を開けた。各クラス上位8台、計24台が出走するこのセッション。各車コースインのタイミング等の駆け引きもあるなかで、序盤から接触的にアタックを行ない、トップタイムをマークしたのは51号車。これに50号車が続き、安定した速さをしかとアピールする。一方、トヨタ勢は7号車のアタッカーを務めた小林可夢偉のタイムが3番手となった。セッション中盤となり、各車は2セット目のニュータイヤを投入。満を持してアタックに入るなか、まさかのアクシデントが発生する。なんと残り5分強の段階で、3番手タイムをマークしたばかりの3号車のキャデラック・レーシングから失火。マシンは停止、すぐに赤旗中断となってしまった。赤旗の原因を作った3号車のベストタイムは抹消されて仕切り直しとなったセッションだが、再開後に7号車が3分24秒267の好タイムで自己ベストを更新したが、なんと7号車のタイムに対してトラックリミット違反が課せられ、タイム抹消に。結果、赤旗中断前に最速ラップとなる3分22秒982をマークしていた50号車が記念大会のポールポジションが決定。2位に僚友の51号車が続き、フェラーリがフロントロウを独占することとなった。3番手には8号車のトヨタが続き、以下、75号車ポルシェ、小林がドライブした7号車トヨタは5番手に。さらに2号車キャデラック、5号車ポルシェ、3号車キャデラックという順位となっている。
 

9日はサーキット内での走行セッションはなく、これまで同様、市街地でのドライバーズパレードが行なわれる。迎える記念大会の決勝スタートは10日土曜日、現地時間の午後4時となる。果たしてトヨタとしてハイパーカーでの3連勝、大会6連覇はなるのか? しのぎを削る戦いがいよいよ幕を開ける。
 

第91回ル・マン24時間レース予選(ハイパーポール)順位(ハイパーカークラスのみ上位3台)

HYPERCAR
1.No.50 フェラーリ499P(A.フォコ/M.モリーナ/N.ニールセン)3’22.982
2.No.51 フェラーリ499P(A.ピエール・グイディ/J.カラド/A.ジョビナッツィ)3’23.755
3.No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮)3’24.451
 

LMP2
1. No.48 オレカ07・ギブソン(P.ラファーグ/P.L.シャタン/L.ホア)3’32.923
 

LMGTE Am
1.No.33 シボレー・コルベットC8.R(N.キャツバーグ/B.キーティング/N.バローネ)3’52.378
 
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)
 

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2023年6月9日 更新

2023年 ル・マン24時間レース プレビュー

初開催から100周年のル・マン、節目の一戦に
 

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・特別枠参加のNASCARのシボレー・カマロZL1をドライブするマイク・ロッケンフェラー、ジミー・ジョンソン、ジェンソン・バトンの3選手(写真左から)
 

世界三大レースのひとつ、歴史ある耐久レースとしてモータースポーツファンから絶大な人気を誇る「ル・マン24時間レース」。夏至を目前に開催される伝統の一戦は、初開催から100年を迎えることもあって、早くからお祭りモード全開に。最高峰クラスのハイパーカーには、日本のトヨタはもとより地元フランスのプジョー、さらにドイツのポルシェ、イタリアのフェラーリなどが総合優勝を目指し、”激アツ”の戦いを繰り広げることになる。
 

100周年記念大会に賑わう

遡ること100年前。1923年に記念すべき最初の24時間レースがフランスのサルト県ル・マン市郊外にあるサルト・サーキットで開催された。このサーキットは常設コースの「ブガッティ・サーキット」と一般公道区間(全体のおよそ2分の3に該当)を組み合わったもので、1周が13.626kmある。ル・マン24時間レース初開催より17年も前に、フォーミュラレースのフランスGPが開催されたほどの歴史がある。今年は記念すべき100周年ながらレース開催は91回目にカウントされるのだが、これはかつてフランスの自動車工業界におけるストライキの影響(1936年)、さらに第二次世界大戦(1940〜1948年)の休止があるためだ。
 

かつては”伝統の一戦”として、独立した耐久レースイベントだったが、2012年からはFIA(国際自動車連盟)とこれまでレースの主催を務めてきたフランス西部自動車クラブ(ACO)による共同開催へと変わり、年間8レースのシリーズ戦に組み込まれることとなった。とはいえ、ル・マンはやはりル・マン。シリーズ戦とはなにもかもが”別格”であり、1年に1度のスペシャルイベントであることに変わりはない。今大会は初開催から数えてちょうど100周年の節目となるメモリアルレースだけに、なおいっそうの盛り上がりとなっている。
 

ファンの目を楽しませる「公開車検」はすでに昨年の時点で復活。今年も2日間にわたりル・マン市街中心部にあるリパブリック広場を舞台に全62台の車検が行なわれた。これまでテストデーを経て、ル・マンウィークに入ってからの日、月曜日に公開車検を実施していたが、今年は金、土曜日の2、3日に実施。4日からの2日間がテストデーに充てられた。文字通り、”公開”しかも市街地で実施する車検は観戦チケットなど不要の無料イベント。記念大会だけに早々に30万枚!の前売りチケットは完売しているが、当然のことながら、広場には連日多くのファンが押しかける盛り上がりを見せた。その中で高い注目を浴びていたのは、ル・マン特別カラーリングを施した地元フランスのプジョー9X8。昨年はル・マン後のWECデビューだったために、今回が初ル・マンとなる。さらに、特別枠として参戦可能な「ガレージ56」からのエントリーとなる改造版NASCARのシボレー・カマロZL1だった。なお、このNASCARには、NASCARカップ・シリーズチャンピオンを7度獲得したジミー・ジョンソン選手はじめ、ル・マン24時間レース優勝経験者のマイク・ロッケンフェラー選手、 さらには2009年のF1ワールドチャンピオンであり、日本のSUPER GTでも2018年にタイトルを手にしたジェンソン・バトン選手が乗ることになっており、参戦車両もさることながら、ドライバーラインナップも多くの話題を集めている。
 

一方、公開車検中の”100周年イベント”の一環として、第1回目のレース優勝車「シェナール&ウォルカー」に加え、今年のル・マンを走る一部の車両が、交通規制によって封鎖された公道をパレード。豪快なエキゾーストサウンドを響かせ、観客を沸かせた。
 

自動車メーカーが最上位クラスに集結

昨シーズン、5連覇がかかったトヨタがその目標を達成。今年も連覇実現を目指して健闘を誓う。一方、今シーズンは数多くのライバルがこれを阻止しようと意気込んでおり、記念大会として名誉ある勝利を巡って相当激しい火花を散らすことになるだろう。
 

前述のとおり、昨シーズン途中からWECシリーズ参戦を開始したプジョーはじめ、最高峰クラスにカムバックを果たしたフェラーリ。しばらくLMGTEクラスでの参戦に留まっていたのだが、2021年にWECへの参戦計画を発表、今シーズンからハイパーカークラスに”再デビュー”となった。フェラーリにとっては1973年以来、50年ぶりにトップカテゴリーで臨むル・マンとなる。排気量2994cc、6つの気筒から1シリンダーあたりの排気量が499cc(2994÷6=499cc
)が車名の由来であるらしい。開幕戦のアメリカ・セブリング1000マイルから快走を見せ、ポールポジション獲得という鮮烈なデビューを飾ると、決勝は3位でチェッカー。申し分のないポテンシャルを披露した。F1ファンにはお馴染みの真紅のカラーを多用した、いかにも”フェラーリ”マシンは、ル・マンでもファンを魅了するはずだ。参考までに、フェラーリが今年のル・マンを制した場合、1965年以来、58年ぶりの総合優勝が実現するという。
 

このほか、キャディラックの新規参戦もアメリカのル・マンファンにとってはうれしい限りだろうが、同じく”復帰組”のポルシェはスポーツカー誕生から75周年というアニバーサリー・イヤーを迎えることもあり、かつてル・マンで躍進していたスポーツカーのカラーリングへの”オマージュ”が施されている。来年にはランボルギーニとBMWの参戦、さらに現在LMP2クラス参戦中のアルピーヌの”ステップアップ”が決まっているハイパーカークラス。かつてLMP1クラスに欧州の自動車メーカーがガッツリと参戦していた時期があったように、新たなる”黄金期”再来は間違いないようだ。
 

日本人参戦は8名に

昨年、初ル・マンでいきなり優勝を遂げたNo.8 トヨタ・ガズー・レーシングの平川亮、さらにもはやル・マンでのベテラン選手となったNo.7 トヨタ・ガズー・レーシングの小林可夢偉を筆頭に、今年は合計8名の日本人選手がル・マンへ挑戦する。No.57 ケッセル・レーシングの木村武史、No.74 ケッセル・レーシングのケイ・コッツォリーノ、辻子依旦、横溝直輝のトリオ、No.777 Dステーション・レーシングの星野敏、藤井誠暢のうち、ル・マン初挑戦は2選手。それぞれ異なるカテゴリーでのパフォーマンスに期待したい。
 

ちなみに、公式車検の翌日、3時間x2セッションが行なわれたテストデーで速さを見せたのは、No.51 フェラーリ・AFコルセ。7日、水曜から始まった公式スケジュールでは、14:00〜17:00(日本時間21:00〜24:00)に1回目のフリープラクティスを実施。その後、ハイパーポール進出をかけた予選が19:00〜20:00(同・翌2:00〜3:00)を実施。そしてレースウィーク初となるナイトセッションとして、22:00〜24:00(同・翌5:00〜7:00)に2回目のフリープラクティスを行った。翌日8日(木)は、15:00〜18:00(同・22:00〜01:00)に3回目のフリープラクティス、そして各クラスの予選上位6台が出走し、決勝グリッドの順位を決めるハイパーポールが20:00〜20:30(同・翌03:00〜03:30)に開催され、その後は決勝に向けて最後のナイトセッションとなる4回目のフリープラクティスが22:00〜23:00(同・翌05:00〜06:00)に実施した。
 

そして、サーキットでの走行セッションが行なわれない9日(金)は、市内でのドライバーズパレードを実施する。記念大会とあって、今年はいつもより開始時間も早く、午後2時(同・19時)スタートとなっている。もうサーキットだけでなく、市街地も世界各国から訪れた熱心なファンで”興奮の坩堝”となっていることだろう。そして待ちに待った100周年、91回目のスタートは、10日(土)の午後4時(日本時間23時)に号砲。今回のウィナーには、100周年を記念したスペシャルデザインが施されたトロフィーが手渡される。イベント自体が特別感満載のル・マンだが、今回はよりいっそう高揚感高まる記念すべきレースとなるのは言うまでもない。
(TEXT : Motoko SHIMAMURA)
 

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・公開車検後の集合写真に収まる93、94号車プジョー・トタルエナジーズ(写真左)
・100周年イベントで公道を特別走行したNo.33 コルベット・レーシング(写真右)








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