富士大会、第2戦は野尻がポール・トゥ・ウィン!
4月9日、前日に続いて静岡・富士スピードウェイにおいて2023年全日本スーパーフォーミュラ選手権の第2戦が行われ、予選で他者を圧倒するタイムでポールポジションを手にしたNo. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)が文句なしのレース運びを見せてトップチェッカー。今シーズン自身初優勝を果たした。
Round.2 予選
土曜日に行われた第1戦は、その前日の悪天候によって専有走行が実施されず、計時予選によるレース運営となったが、大会2日目は青空が広がる好天気に恵まれ、まだ残雪が残る富士山もきれいな勇姿を見せた。
午前9時、シーズン初のノックアウト予選がスタート。気温10度、路面温度20度とまだ少し寒さが残る中でセッションが始まる。まずはQ1・A組の11台がコースへと向かい、コンディションの確認を済ませるとニュータイヤへとスイッチし、アタックに入っていく。今シーズンから採用された新スペックタイヤでどうアプローチするか、またタイヤの温まりをどう見極めるか。様々な要素を踏まえたアタックに挑む11台。ターゲットタイムとなる1分22秒後半のタイムをNo.37 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)がマークすると、No.5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がこれを更新。さらに野尻が1分22秒579とタイムアップしてトップに浮上。後方でアタックしていた各車も自己ベストタイムを更新してチェッカーを受けたが、野尻のタイムを上回れず。結果、Q1・A組は野尻を先頭に、宮田、No.3 山下健太(KONDO RACING)がトップ3となった。
続くQ1・B組には、前日の初戦でセンセーショナルなデビューウィンを達成したNo.15 リアム・ローソン(TEAM MUGEN)が出走。真っ先に1分22秒台に入れたNo.12 福住仁嶺(ThreeBond Racing)をターゲットタイムに続々と各車ベストタイムをマークする中、No.39 阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)が1分22秒057と大きくタイムを縮めた。だが、セッションはこのまま終わらない。ライバルよりやや遅くコースインし、タイミングを見計らうようなアタックを見せたローソンはワンアタックラップで1分22秒021をマーク。B組トップでQ1を終えた。また、阪口に続いて3番手につけたのはNo.53 大湯都史樹(TGM Grand Prix)だった。
続くQ2はQ1より3分短い7分間で行われる。出走台数はQ1各組上位6台の計12台。大会初日から好調なTEAM MUGENの2台_野尻とローソンはセッション序盤からコースへ。これに4台が加わり、少し間を置いて残る6台がコースに向かった。タイヤをどうウォームアップさせるかでコースインのタイミングが異なることになったが、開始7分過ぎにまず福住が1分22秒前半のタイムをマークすると、その直後に山下がこの日初となる1分21秒792でトップタイムを塗り替えた。さらに坪井が1分21秒731でトップを奪取、これを境にして続々と21秒台を刻むドライバーが現れる中、クリアラップを味方にした野尻が1分21秒196とダントツの速さを披露。文句なしにトップに立った。これで野尻は前日の第1戦に続いてポールポジションを獲得。通算15回目へとまたひとつ記録を伸ばした。2番手には宮田。なんと、自身8度目の2番手グリッドに甘んじる結果となっている。3番手には大湯。第1戦では序盤にポジションを下げてしまった悔しさを、第2戦の決勝でどうリベンジするか期待がかかる。
【第1戦富士 予選結果 トップ3】
1.No. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’21.196
2.No.37 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)1’21.570
3.No.53 大湯都史樹(TGM Grand Prix)1’21.590
Round.2 決勝
大会2日目も前日同様に予選終了から4時間あまりで決勝を迎えた。今回も41周の戦いで給油作業はない。一方、午後から日差しに恵まれ、気温は13度とさほど上がらなかったが、路面温度は32度まで上昇する。
ポールポジションの野尻は今日も完璧なスタートを決めて見せる。だが、前日と同じくロケットスタートを決めた予選3番手の大湯がすぐさま野尻に急接近。サイド・バイ・サイドに持ち込むと、コカ・コーラコーナーで逆転を果たしてトップへ躍り出た。これでオープニングラップは、大湯、野尻、そして予選2番手の宮田がトップ3を構築する。一方、宮田の背後には予選5番手スタートのNo.38 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)が迫り、2周目には逆転に成功。ペースアップが難しいのか、宮田はその後も後続車との攻防戦に追い込まれ、4周目の1コーナーでは予選6番手スタートのNo.3 山下健太(KONDO RACING)にも逆転を許した。
緊迫のレースが動いたのは8周目。1コーナーでNo.36 ジュリアーノ・アレジ(VANTELIN TEAM TOM’S)が痛恨のスピン。タイヤ後輪がコースサイドに落ちてしまい、スタック。これを受けてセーフティカーが導入される。そして、車両回収が続く中でレースは10周目へ突入すると、続々とタイヤ交換のためにピットへ各車が舞い戻ってくる。トップ大湯と2番手野尻のピット作業タイムに大差はなかったが、大湯は後続車両がピットに戻ってくるタイミングと重なり、少しばかりコース復帰が遅れてしまう。これに対し、チャンピオンチームである野尻のピットはピット出口に一番近いため、難なくコースへ。結果、野尻はコース復帰直前でトップ奪還に成功。大湯が2番手に下がり、以下、坪井、山下、宮田、ローソンのオーダーで再び戦いが始まった。なお、このタイミングでステイアウトをしたのは6周目にペナルティストップを消化して遅れを取ったNo.20 平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)のみだった。
レースは12周終わりで再開となり、野尻の前に出たい大湯は再び1コーナーで勝負に出る。ブレーキを激しくロックさせ、一旦前に出た大湯だったが、野尻もこれに応戦してトップを死守する。このあと大湯は傷んだタイヤのマネージメントに苦戦することとなり、14周目には後続の宮田に逆転され、さらに20周を過ぎるとローソン、山下らの先行を許してしまう。ついに27周目にはタイヤ4本交換のためにピットインを強いられ、実質戦力外に甘んじた。
平川がピットインを先延ばしする中、実質上のトップは野尻のまま。これにおよそ2秒差で坪井、さらにローソンと続く。ローソンは次第に坪井との差を縮める力走を見せたが、タイヤ交換のピットイン時に前方車両との差を大きく取りすぎたことがペナルティの対象となってしまう。結果、レース後の結果に5秒のタイム加算が科せられた。レース中にこのペナルティを知ったローソンは、少しでも有利な状況に持ち込もうと前方の坪井に接近して勝負に挑んだが、坪井はこれを見事にシャットアウトし、2位チェッカーを受けた。
結果、野尻がトップを守り切って今シーズン初優勝。坪井はシーズン初表彰台の2位に。ローソンは3番手でチェッカーを受けたが、ペナルティ加算によって5位へドロップ。代わって3位に山下が続き、2020年開幕戦以来となる表彰台に立った。
2戦とも波乱に富む展開となった開幕の富士大会。新車両、新たなスペックでのタイヤをどう使いこなすか、また、新たに導入された「SF go」のシステムを駆使したチーム戦略によってレースが動く大会となっただけに、今シーズンはコース外で繰り広げられるチーム同士の駆け引きにも注目が集まりそうだ。早くも第3戦鈴鹿大会は4月22、23日に開催される。
【第2戦富士 決勝結果 トップ3】
1.No. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)1:03’04.489 41L
2.No.38 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)+3.102
3.No. 3 山下健太(KONDO RACING)+3.693