2022 ル・マン24時間レース - イベント・レースレポート

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2022年6月11日 更新

第90回ル・マン24時間、スーパーポールを射止めたのはトヨタ8号車のB.ハートレー!

公式テスト、フリープラクティスを経て迎えた第90回ル・マン24時間レースの予選。決勝レースを上位グリッドからスタートを切るには、まずこの予選で各クラス上位6台に食い込むことが第一条件となる。8日(水)の午後7時(日本時間・翌午前2時)、1時間にわたって行われた予選は、気温20度、路面温度33度、欧州のサマータイムならではの西陽が傾きつつある中で行われた。
 

セッション折り返しを過ぎて、LMGTE AmクラスのNo.93 プロトン・コンペティションがユノディエールの第1シケインでスピン、車両がガードレールに激突したことでセッションが赤旗中断となった。その後、再開したものの一部コースでは雨が降りはじめ、文字どおりアタックチャンスに”水を差す”状態となる。セッション終盤になると、アタックに挑む車両も少なくなかったが、トップタイム更新をした車両はほとんど現れなかった。これにより、ハイパーカークラスでは、トップタイムを7号車のトヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)がマークし、暫定ポールポジションを獲得した。逆に8号車はアタックチャンスに恵まれず、総合29位という結果に。しかし、もともとハイパーカークラスは5台のエントリーであるため、翌日の「ハイパーポール」への出場は可能となる。
 

迎えた翌9日(木)のハイパーポールは現地時間午後8時(日本時間・翌午前3時)にスタート。30分間のアタック合戦となる。各クラス上位6台、計24台がそれぞれクラスポールポジションをかけてアタックするが、コースにいる他車のポジションを気にしつつ、アタックラインをうまく確保することが求められる難しいセッションでもある。トヨタ・ガズー・レーシングでは、7号車は小林可夢偉、8号車はB.ハートレーがアタックを担当。それぞれ共にタイムを削りながらのポジション争いを繰り広げていたが、可夢偉はトラックリミット(走路外走行)でベストタイムを抹消されてしまい、3分24秒828がベストタイムになる。逆に8号車のハートレーが後からアタックし、3分24秒408をマーク。可夢偉のベストタイムを上回り、ハイパーポールにおける最速タイムを刻む結果となった。
 

ハイパーカーでの戦いは2年目。決勝では7号車と8号車の”兄弟対決”も見どころに違いないが、24時間という長い戦いを味方に、ライバルたちの戦略も気になるところ。TGRとしては、ハイパーカーでの2連勝、そして大会5連覇に向けて、いよいよスタートが近づいてきた。
 

第89回ル・マン24時間レース予選(ハイパーポール)順位(LMP1クラスのみ上位3台)

<HYPERCAR>
1.No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/中嶋一貴/B.ハートレー組)3’24.408
2.No.7 トヨタGR010ハイブリッド(M.コンウェイ/小林可夢偉/J-M.ロペス組)3’24.828
3.No.36 アルピーヌA480・ギブソン(A.ネグラオ/N.ラピエール/M.バキシビエール組)3’24.850
 

<LMP2>
1. No.31 オレカ07・ギブソン(S.ゲラエル/R.フラインス/R.ラスト組)3’28.394
 

<LMGTE Pro>
1.No.64 シボレー・コルベットC8.R(T.ミルナー/N.タンディ/A.シムズ組)3’49.985
 

<LMGTE Am>
1.No.61 フェラーリ488 GTE Evo(L.ペレッタ/Cグルネワルド/V.アブリル組)3’52.594
 

(TEXT : Motoko SHIMAMURA)
 

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2022年6月11日 更新

2022年 ル・マン24時間レース プレビュー

レギュラースケジュール下で90回目の開催を迎える!

世界中のモータースポーツファンを虜にしてやまない耐久レースの雄、「ル・マン24時間レース」。2020、2021年はコロナ禍で大幅なスケジュール変更を強いられてきたが、初開催から99周年、90回目という節目の戦いを迎える今年は、ついに本来のスケジュールに”カムバック”する形で開催される。
 

”非日常”が”日常”であるル・マン24時間

コロナ禍でパンデミックの中にあった20年は9月に実施されたものの、長いル・マンの中で初めてとなる無観客開催だった。また、昨年は感染の再拡大を鑑みて開催を延期。無観客開催こそ回避できたが、迎え入れる観客は上限5万人と、通常の5分の1程度に留める制限をかけて8月21日にスタートを切った。
 

そして迎えた2022年。日本よりも早く3回目もしくは4回目のワクチン接種も進み、ル・マン開催もこれまでと変わらない”夏至直前”の週末に実施されることになった。もちろん、観客数の制限も撤廃された。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の影響は多少なりともあり、社会情勢の変化によってチームの参戦取りやめやドライバー変更なども見られたが、基本的にはこれまでのル・マンが確実に戻りつつある状態だ。フランス国内はもとより、近隣諸国からの観客が詰めかけており、スタンドではマスクなし、ソーシャルディスタンスなしでレースを観戦する姿があった。クローズドのサーキットコースに加え、一般公道をもレーシングコースとして組み入れ、24時間に及ぶレースを開催し、多くの観客を迎え入れるイベントは、とんでもなく”非日常”的イベントと言えるが、これこそが長い歴史で培われてきたル・マンならではの”日常”。ようやくその”日常”が3年ぶりに戻ってきたと言えるだろう。
 

過去2年間、見送られてきた「公開車検」もその一つ。2日間にわたって行われる公開車検は、ル・マン市街中心部のリパブリック広場で行われ、チームとドライバーは参加受付、写真撮影、メディア対応やステージでのトークショーなどをこなす。そしてサーキットから運ばれてきた車両は二か所の計測所を通過し、ドライバー・スタッフらとの記念写真撮影に臨む。開催中は、なんとなくダラダラとした時間にも思えるが、時間厳守であくせくするわけでもなく、「また今年もル・マンが始まるなぁ」という感傷に浸るような感じでもあり、関係者が久々に顔を合わせる”サロン”のような意味合いもあり、会場には独特の空気が漂っている。ただ、3年ぶりとなった今年は他レースとバッティングしていたドライバーが多数おり、参加受付はもちろん、写真撮影に参加できない事態となった。アメリカでのIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権はじめ、ジャカルタでのFIA フォーミュラE、そしてGTワールドチャレンジ・ヨーロッパなど多方面に分散しており、今後はスケジュールがバッティングする場合の対策が講じられるのではないかと思われる。
 

なるか、トヨタの5連覇

最終的に参加できる車両は全62台。今年は5人の日本人選手が参戦を果たす。その筆頭は、昨シーズンのチャンピオンであり、今年からはチーム代表という重責も担う小林可夢偉(トヨタ・ガズー・レーシング)。No.7 トヨタGR010ハイブリッドでM.コンウェイ、J-M.ロペスという布陣で挑む。一方、可夢偉のライバルであり僚友でもあった中嶋一貴は、昨シーズンをもってドライバーを引退。今は、TGR-Eの副会長を務める。一方、そのシートを受け継いだのが平川亮。S.ブエミ、B.ハートレーと共に8号車をドライブする。平川は、LMP2クラスでのル・マン参戦、WEC参戦の経験済み。今シーズンからトップカテゴリーのハイパーカークラスに挑戦する。
 

二人が所属するチーム、TGRはル・マン24時間レースでの初勝利を2018年に達成。以来、レースにおける記録を更新し続け、ル・マンを”無敗”で戦ってきた。昨シーズンは、新たに導入された”ハイパーカー”クラスでの一戦となったが、ここでも盤石の戦いで勝ち星を上げることに成功。当然のことながら、今年もハイパーカーでの連覇を目論む。
 

ル・マン24時間は、伝統の耐久レースであると同時に、WEC_世界耐久レースのシリーズ戦の一つでもある。WECの第3戦に位置づけられているが、今シーズン過去2戦の戦いは決して盤石とは言い切れず、ドライバー選手権およびマニュファクチャラー選手権においてもライバルの選考を許している状況。シリーズ最長のル・マン戦を制することができれば、通常レースの2倍のポイントを獲得することが可能のため、何はなくとも優勝が目指すことになるだろう。
 

この他、GTマシンでの参戦を果たすのが3選手。木村武史はケッセル・レーシングからNo.52 フェラーリ488 GTE Evoをドライブ。馴染みある蛍光カラーのマシンが目を引く。そしてNo.777 Dステーション・レーシングからは、星野敏、藤井誠暢両選手が出場。アストンマーティン・バンテージAMRでどこまで勝負できるか。いずれも近年、継続してル・マンへの挑戦を続けるドライバーばかり。それぞれのベストパフォーマンスを目指してスタートを切ることになる。
 

ル・マンにおける走行スケジュールは、まず8日(水)に14:00〜17:00(日本時間21:00〜24:00)に1回目のフリープラクティスを実施。その後、ハイパーポール進出をかけた予選が19:00〜20:00(同・翌2:00〜3:00)に行われる。そしてレースウィーク初のナイトセッションとして、22:00〜24:00(同・翌5:00〜7:00)に2回目のフリープラクティスを行う。翌日9日(木)は、15:00〜18:00(同・22:00〜01:00)に3回目のフリープラクティス、そして各クラスの予選上位6台が出走し、決勝グリッドの順位を決めるハイパーポールが20:00〜20:30(同・翌03:00〜03:30)に開催され、その後は決勝に向けて最後のナイトセッションとなる4回目のフリープラクティスが22:00〜24:00(同・翌05:00〜07:00)に実施される。そして、走行セッションのない10日(金)は、3年ぶりに市内でのドライバーズパレードを実施。徐々にファンの熱が高まる状況となってくるのは言うまでもない。そして90回目のスタートは、11日(土)の午後4時(日本時間23時)に号砲を迎える。コロナの収束の願いも込めてタフな戦いが幕を開けることになる。
 

(TEXT : Motoko SHIMAMURA)
 
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