第89回ル・マン24時間、可夢偉の7号車トヨタが念願の初勝利!
第89回ル・マン24時間がチェッカーを迎え、大きなトラブルもなく安定の走りを見せたTOYOTA GAZOO RacingのNo.7 トヨタGR010ハイブリッド(M.コンウェイ/小林可夢偉/J-M.ロペス組)がついに悲願のル・マン優勝を実現させた。2位には他車による追突、メカニカルトラブルを抱えつつ、しぶとく戦いきった僚友の8号車(S.ブエミ/中嶋一貴/B.ハートレー組)。この結果により、トヨタはハイパーカークラス初年度の戦いをものにし、また、2018年の初優勝から4年連続での優勝を達成している。
アクシデントやマシントラブルなど、勝利した7号車より”災難”が多かった8号車。とはいえ、7号車とてノートラブルで24時間を制覇したわけではない。レース序盤、スタートドライバーを務めたコンウェイがドライブ中にリアタイヤが2度に渡ってパンク。イレギュラーのピットインでタイヤ交換を余儀なくされた。また、折返しの12時間を過ぎた中盤には可夢偉がオーバーランを喫するなど、幾度となく半プニングに見舞われた。さらに、後半になると先に8号車が被った燃料タンク系のトラブルが7号車にも及び、スティントのラップ数を予定より切り上げたり、ときにはコース上に一旦クルマをとめて対策を施すなど、重大なトラブルになる前に少しのロスタイムならいとわない、という考えで着実なレース運びを進めてきた。
厳しい状況の中、都度最善の戦略をやり遂げることにより、7号車は徐々に8号車との差を築き上げ、残り5時間を切ると8号車を1周遅れにした。実のところ、8号車は燃料タンク系のトラブルがその後も解決するには至らず、もともと予定していたものよりも短いスティントで戦いを乗り切る戦略に切り替えざるを得ない状況になっていた。また、終盤には後続とのギャップを踏まえた上でピット作業を繰り返す事態となり、安定感を欠く戦いとなってしまった。このようなトラブルは、ニューマシン初年度だからこそのものなのか、あるいは24時間を戦うル・マンという特別の舞台だからなのか、様々な要素が織りなす中でまだはっきりとした原因はわからないだろうが、今後の戦いに向けてのトラブルシューティングが山積していることだけは間違いなさそうだ。
幸い、7号車と8号車は午後4時を過ぎてランデブー走行でのフィニッシュラインを通過。ワンツーフィニッシュで連覇を祝った。なお、今シーズン始めてWECへの参戦を開始し、また話題を集めていたグリッケンハウス・レーシング。3位のNo.36 アルピーヌA480・ギブソンと同一周回で708号車がチェッカーを受ける結果となった。
LMP2では、チームWRTがチーム同士によるポジション争いを展開。予選クラスポールのNo.38 オレカ07・ギブソン(R.ゴンザレス/A.F.ダ・コスタ/A.デビッドソン組)から41号車(R.クビサ/L.デレトラズ/Y.イェ組)が序盤にトップを奪ったが、その後、31号車(R.フラインス/F.ハプスブルク/C.ミレッシ組)が逆転。だが41号車もその後方から逆転のチャンスを狙い、チーム同士の激しいバトルを展開した。残り2時間を切って再びクラストップに躍り出た41号車。このままチェッカーを迎えるかに思われたが、なんと、残り1周にも満たない3分の時点で、41号車があろうことかスローダウン。これを横目に31号車がクラストップに返り咲き、チェッカーを受ける。だが、41号車はホームストレートまでクルマを運ぶことができず、チームのワンツーフィニッシュの夢が絶たれた。
LMGTE-Proは恒例のフェラーリ、ポルシェ、そしてシボレー同士が激しい戦いを繰り広げた。その中からル・マンを知り尽くすAFコルセの51号車(A.ピエール・グイディ/J.カラド/C.レドガー組)がライバルを徐々に引き離し、圧倒的な強さを見せつける。負けじと2番手からコルベット・レーシングの63号車(A.ガルシア/J.テイラー/N.キャツバーグ組)が攻め立てたが、逆転の一手が打てず。このままチェッカーを迎えた。3位には、ポルシェGTチームの92号車(K.エストーレ/N.ジャニ/M.クリステンセン組)が続いた。そして、日本からの参戦ドライバーも挑んだLMGTE-Amクラス。こちらもプロクラス同様、手堅いレース運びを見せ続けたAFコルセの83号車(F.ペロード/N.ニールセン/A.ロベラ組)がトップチェッカーを受けている。
昨年のル・マンは開催が9月まで遅れ、無観客での開催だった。依然新型コロナウイルス感染拡大の影響は大きく、今年は8月に延期。観客数も極めて限定されての開催ではあったが、伝統の耐久レースの開催に胸を躍らせるファンも多かったことだろう。来年のル・マンはWEC第3戦として6月11〜12日、従来の日程での開催実現が待ち遠しい。
ル・マン24時間レース最終結果(総合トップ3および各クラストップ)
<LMP1>
1.No.7 トヨタGR010ハイブリッド(M.コンウェイ/小林可夢偉/J-M.ロペス組)371周
2.No.8 トヨタGR010ハイブリッド(S.ブエミ/中嶋一貴/B.ハートレー組)369周
3.No.36 アルピーヌA480・ギブソン(A.ネグラオ/N.ラピエール/M.バキシビエール組)367周
<LMP2>
No.31 チームWRT(R.フラインス/F.ハプスブルク/C.ミレッシ組)363周
<LMGTE-Pro>
No.51 AFコルセ(A.ピエール・グイディ/J.カラド/C.レドガー組)345周
<LMGTE-Am>
No.83 AFコルセ(F.ペロード/N.ニールセン/A.ロベラ組)340周