Walking The Walk: A 580hp Pandem R32
By Paddy McGrath
オ―バーフェンダーのパラドックス
このトピックは死ぬほど議論してきたので、ここでまた話す必要はないと思う。今までの流れを掴んでいない人達用に説明すると、大きく分けて、ふたつのポイントに絞り込める:一つは、ネット上、写真やビデオで見るより、ワイドボディーは実物の方が迫力がある。二つ目は、そこまで車をアグレッシブに仕上げるなら、それだけのパワーを出さなければならない。
David ColemanのR32 Nissan Skylineはこの条件を両方見事にクリアしている。 これは Davidのはじめてのプロジェクトカーではなく、この様なプロジェクトには十分慣れている。過去に彼の500+hp 2JZ Rocket Bunny S15を取材し、今回のR32はそれに続く車だ。彼のモットーは「If it ain’t broke, don’t fix it」、つまり「直す必要がなければ、そのままにしておけ。」というアメリカのことわざだ。
今回のベース車両はRB20DETスカイラインGTS-tであり、人によっては魅力的なポイントである。例えDavidがGT-Rをぶった切っても批判しないが、逆にベースモデルをこんな立派な姿に変身させることにとても魅力を感じる。
今回の取材はかなり前から計画していたが、コロナのせいで予想よりも時間がかかってしまった。しかしDavidはその間、時間を有効に使い、車をさらに進化させていた。
取材に向かう途中、独特なアンチラグ音が聞こえ、車は最高の状態だったと確信できた。そしてこの車は一体何なのか?まずは、当たり前の部分から始めよう。ベースは日本からアイルランドに輸入された1991 Nissan Skyline GTS-t 。既にこの国に存在する、数多い日本のパフォーマンスカーの一つだ。我々は日本と同じ左側通行なので、国内の日本車人気にもかなり影響していると思う。
車はオリジナルのPandemエアロを装着し、純正GT-Rフロントフェンダーとサイドスカートの上に被せてある。フロントバンパーもGT-R純正品だ。普段の職業は板金屋なので、オリジナルGT-Rフロントを選んだのは偶然とは思えない。車は元々ブラックだったが、今のレッドに塗り替えられ、フロントアーチはタブ加工され、エンジンルームもスムーズ化された。
足回りはBC Racing車高調で、ホイールは新品Work VS-XX フロント18×10.5-inch-27とリヤ18×11.5-inch-32。さらに、調整式キャンバーアームとフロントテンションロッドでハンドリング性を高めている。
フロントホイール裏にはAudi Q7から外したBrembo 18Zキャリパーが装着されており、リヤにはツインキャリパーシステムが利用されている。駆動はFRのままだが、GT-R用デフハウジングとGT-Rドライブシャフトを利用し、5.1ファイナルドライブのNismo 2 way LSDと組み合わせている。強度性の高い、最近リビルトされたRB25ギヤボックスはOS GIKENツインプレートクラッチとマッチングされた。
派手な車は、それなりのパワーが必要だと書いたのを覚えていますか?今回はまさにその通り。ベースのRB20DETエンジンはとっくに降ろされ、今はシャシダイでも証明さ、582hpを発生するシングルターボRB27がエンジンルームに載せてある。2.7リッターの排気量はRB26ブロックとCP鍛造ピストンの組み合わせで可能になり、RB25ヘッドはHKS 272カムシャフト、ソリッドリフターとペアリングされている。
改造されたGarrett GT3582ターボチャージャーでブーストの立ち上がりも向上、6Boostマニフォールドに取り付けられている。マフラーとTiALウエーストゲートに取り付けられた排気パイプはワンオフものであり、ペイントされたカーボンボンネットから出ている。
Sard Racingフュエルレール、燃圧レギュレーター、1000ccインジェクターで燃料をお送り込み、Greddyのインテークマニホールドも使用している。RB26カバーの下にはR8用コイルパックとカスタムワイヤハーネスがある。オイルはカスタムツインオイルクーラーで効率よく冷やし、水温はカスタムラジエーターで制御している。
Link ECUで全てコントロールされ、パワーはBlitz Dual SBCブーストコントローラーで調整できる様になっている。余談だが、ストリートカーでアンチラグを使うことが、どんなに馬鹿げたことかは忘れていた。単なる爆音ではなく、競技用のアンチラグ音であり、ブーストコントローラー横にあるスイッチでON・ OFF設定ができる。
「やかましい」という単語だけでは物足りない。でも、違う意味で最高だ。内装は機能性を保ち、安全機能と便利機能をアップグレードしている。 Safety Devicesロールケージは溶接されたが、ドアバーは取り外し可能となっている。さらに、競技用消化システムも搭載され、バッテリーはトランクに移動された。
大事な情報は全てAiMデジタルボードでドライバーに伝えられ、Blazeシフター、Group D油圧式ハンドブレーキとMomoステアリングでタッチポイントをまとめている。シートはSparco Pro2000でハーネスもSparco製だ。
あと、最初に見逃したチューニングポイントはボディカラーに塗られたドアバイザーである。このさりげない仕上がりがとても良かった。残念ながら取材した日は非常に風が強く、動画で走行を撮影していたら、とんでもない結果に終わっていただろう。運良く、Driftgamesはこの同じ車で動画を作っていたのでそこで確認できる。
今回の車は説明や、正当化もいらない。誰が見ても楽しむために作られた車だと分かるはずだ。パーフェクトなショーカーでもなく、ツッコミどころはあるが、そのために作られたわけでもない。人は細かいところを見て批判するかもしれないが、Davidはアンチラグを鳴らしながら聞こえないだろう。
Paddy McGrath
記事提供元:SPEEDHUNTERS