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2020年 ル・マン24時間レース プレビュー




コロナ禍のル・マン。無観客開催で迎える異例の週末

 
6月、夏至を目前にしたヨーロッパでは多くのプロスポーツが目白押し。伝統の一戦も多く、爽やかな天気が人々を一層開放的にし、イベントをより盛り上げる。そんな中で長きにわたり開催されてきたル・マン24時間レース。だが、2020年はまったく事情が変わってしまった。もちろん、その原因は世界中を震撼させた新型コロナウイルス感染症の蔓延だ。猛威を振るい続けたウイルスはいまだ”収束”もおぼつかず、”終息”に至ってはなんの見通しも立っていない。これほどのパンデミックが世界中に広がるとは、誰しも思わなかったはずだ。
 

6月から9月へ

そもそもル・マンが毎年夏至にもっとも近いタイミングで開催されるのにはれっきとした理由がある。おもに24時間を走り続けるドライバーへの影響を少しでも軽減するためだ。夏至直前の欧州は午後10時を過ぎてもなお日が高く、日本で言うところの夕方に近い。つまり、たとえライトオンの状態であってもヘッドライトを頼りに走るというほどではない。結果的に、コース上での走行への負荷が軽減され、ひいては車両同士の不要な接触等の機会も減ると考えられる。だが、コロナというパンデミックはル・マンの開催時期を大きく先へと追いやり、季節は初夏から秋へと移ろいだ。ようやく9月19−20日の日程での実施となったものの、いつになく長い夜のもとでの戦いを強いられることになってしまった。
 

レースは無観客で

過去には世界大戦等で大会が危ぶまれたこともあるル・マン24時間。今年で88回目となる大会が夏至の頃から初秋の時期へと追いやられたことも異例だが、モータースポーツファンにとって、特に現地ル・マンでの観戦を心から楽しみにしていたファンにとっては今年の大会は複雑な思いをもって展開を見守ることになるだろう。というのも、延期ながら開催が実現したのは何よりではあるが、レースは無観客にて行われるからだ。昨年、かの地には25万を超えるファンが集ったと言われている。ヨーロッパをメインに世界中から歴史ある一戦を見ようとル・マンへと詰めかけるのだ。期間中はホテルだけでなく、今で言う”民泊”やキャンピングカー、あるいはサーキット内のテントを”仮のすみか”とし、長いレースウィークをめいっぱい堪能する…。それがル・マンでの楽しみなのだ。なにもレースを見るだけが楽しみではない。ル・マン24時間が行われている場所を訪れ、その場の雰囲気そのものすべてを体感する。それがル・マン24時間における観戦の”心得”とでもいえるだろう。その楽しみが無と化した今年のル・マン。走る方、見る方の双方が”なにか欠けた”状態で行われる24時間レースは、また違った意味で”歴史に残る”1戦になるかもしれない。
 

お祭り要素のイベントも皆無に

従来、60台がフルグリッドに並ぶル・マンだが、今年は59台による戦いとなる。クラスはLMP1、LMP2、LM-GTEプロ、LM-GTEアマの4クラスに分けられ、それぞれクラス別にレギュレーションも細分化されている。金絵、日・月曜にはリパブリック広場において公開車検を実施、水曜からサーキットでの走行が幕を開ける。木曜深夜には各クラスのポールポジションが決定。金曜は市街地でのドライバーズパレードが行われ、お祭り気分も最高潮となる。
 

だが、今年は公開車検もなく、金曜のパレードもなくなった。走行スケジュールは、木曜から。ただし、コロナ禍でWECのシリーズ戦も一部が延期(中止)されていた背景から、ル・マンでの走行時間はこれまでよりも多く設定され、初日も木曜だけでもフリープラクティスおよび予選1回目で合計10時間45分もの走行枠が確保されている。もちろん、この間にナイトセッションも行われる。これでクルマのセットアップ確認はもとより、ドライバーたちも気持ちの上で”走る準備”が満たされることを願いたい。
 

三連覇、達成なるか。トヨタの挑戦

一方、予選方式はコロナ禍での”ニューノーマル”により、方式が改められた。従来、3度の予選を通して総合ベストタイムを決めていたが、予選セッションは2回に留め、うち1回目を木曜に45分実施し、そして2回目は金曜日1時間のフリー走行後に1時間のセッションで行う。だが、全59台が2回の予選でアタックができるわけではない。全59台が出走できるのは、木曜の45分間のみ。ここで各クラス、つまり4クラス上位6台のみが金曜日に行われる2回目予選に出走できるチャンスを手にすることができるのだ。この2回目の予選は「ハイパーポール」と呼ばれ、これで各クラス上位のスターティンググリッドを確定する。
 

従来は、3度の予選で自己ベストをどのタイミングに出すか、と気に異なるセッションでマークしたタイムがチームベストとなることもあったが、今回のハイパーポールは、一度ふるいにかけられた上位チームにのるガチンコのアタック合戦が繰り広げられるため、サーキットでアタックの様子を見ることができない”リモート観戦者”にとっては、ライブで誰が最速ドライバーなのかを見届ける楽しみが与えられたと言えよう。
 

そして、LMP1クラス、つまり総合優勝の可能性をかけて挑むのが、TOYOTA GAZOO RACING。7号車、8号車の布陣にはそれぞれ小林可夢偉(No.7)、中嶋一貴(No.8)の日本人ドライバーが優勝をかけて戦いに挑む。昨年、優勝目前に迫った7号車に代わり、8号車として自身ル・マン2勝目を挙げた一貴。自身3度目の優勝がかかっている一方、同じように日本人として総合優勝を目指して挑戦を続ける可夢偉にも勝利の美酒を味わってもらいたいところ。果たして今年はどちらのトヨタTS050ハイブリッドが優勝に王手をかけるのか。期待がかかる。
 

さらに、日本人ドライバーとしてフル参戦を続けるLMP2クラスの山下健太。今季はコロナ禍でWEC開催が延期され、参戦の予定がなかったSUPER GTにスポット参戦したり、SUPER FORMULAでは開幕戦で2位表彰台に上がるなど、好調さをアピール中だけに、自身初のル・マンでもいい意味で暴れそうな気配がする。
 

このほかにも、日本チームとしてGTEアマクラスにはCARGUY RACINGが参戦を果たす。昨年ル・マンで初挑戦したが、今年の第二章でどのようなドラマを作り上げるのか、見どころのひとつだろう。
 

待ちわびたル・マンでの戦い。ドライバーはもちろんのこと、レース関係者にとっても、そして世界中のファンにとっても心躍る24時間の戦いになってもらいたいものだ。
 
TEXT : Motoko SHIMAMURA
 

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