6気筒スワップ: BarraエンジンのSkyline R32
Chapters
1. To Be Or Not RB
2. Rate Or Hate?
3. Barra Boy
4. Special Import
5. Barra The World
CHAPTER 1:To Be Or Not RB
エンジンスワップは、車カルチャーと同じくらい古い。
他メーカーのエンジンを変えるのも昔から普通であり、1930時代からアメリカのホットロッド族は、フォードのフラットヘッドV8をいろいろなシャーシにも載せ換えて来た。
だからこそ全てのエンジンスワップを見てきたと思われがち。Mattも経験豊富で全て見たと思っていた。
しかし、4月Cootamundraで開催されたTuners Edge GT-R ChallengeではRB26とは違う、独特なオージーフォード6気筒のエンジン音が聞こえてきた。そして、目にしたのは「XR32」のナンバープレートをつけたスカイラインの姿だった。
このSpeedhuntersでさえ他メーカーのエンジンスワップはよく見られるが、フォードのロゴが入るブロックを聖なるGT-Rエンジンルームに載せるたら批判の嵐を迎えるだろう。静かな人生を送ろうと思っていたらまずやらないことだ。
フォードのXR6シリーズの車に載っていた直6 Barra24バルブターボエンジンなら尚更だ。このエンジンはオーストラリア専用のエンジンだったがチューニングのし易さ、買い求め易さ、と高いポテンシャルのおかげで世界的に有名になっている。
CHAPTER 2:Rate Or Hate?
「この車は賛否両論だ。」とこの車を生み出したシドニーGrim PerformanceのオーナーDennis O’Malleyは言う。「そして驚かないことに日産好きのファンはこの車が大っ嫌いだ。」
しかし、Dennisは話題にするためにこの日産とフォードの間の子を作ったわけではない。考えれば考えるほど納得いく組み合わせだったからだ。
「あるお客様からこのスワップを提案されたが、最初はそのアイディアに抵抗があった。」とDennisは振り返った。「最初はやらない方向を説得したが、考えているうちにRBエンジンより色々なメリットがあるBarraエンジンを真剣に検討する様になった。RBよりも安く、ベースエンジンが買いやすい。鋳鉄ブロックは非常に強く、排気量は4リッターなので簡単にパワーが出せる。」と彼は考えた。
「さらに変わったことをするのが好きだしね。」
ここでGT-Rのファンはため息をできるがこのR32はもともと「R」ではなく、GTS-Tがベース車両だった。走行不能の車体はGrim Performanceのガレージに運ばれ、Dennisの手によって12ヶ月の作業を行うことになった。
新鮮なアイディアは、簡単に思い浮かんでも現実化するのはそう簡単ではない。BarraをR32のエンジンルームに入れるのが一番難しいことだったらしい。さらに、元々のお客様もこの時点でプロジェクトから降り、Dennisが引き受け、最後まで見届けることにした。
出来るだけ純正の仕上がりにしたかったため、完璧になるまで何回もエンジンを載せたり、下ろした。
「RB26より高いエンジンなため、ノーマルGT-Rボンネットの下に収まる様、低い位置にマウントした。クロスメンバーの加工とスンプを切って溶接する必要があった。Barraエンジンを載せたR32は他に一台だけ見たことがあり、その車はカムカバーをクリアするためにボンネットがもっこり浮かび上がっていて不自然だった。」
CHAPTER 3:Barra Boy
Dennisがダミーエンジンを使ってエンジンのインストールを手がけていた間、本物のエンジンはMick’s Motorsportの手によって組み上げられていた。
特別に準備されたエンジン腰下は、アップグレードされたヘッドとカムと組み合わせられ、Precision 6766 turbo, Plazmaman 76mmスロットルボディー、インレット、インタークーラー、2,400ccインジェクターとHaltech Elite ECUで仕上げられた。
DVS TuningのJeremy GilbertでセッテイングされたE85燃料チューンではブースト26psi (1.76bar)でとんでもない975hpを発生する。Dennisによると「ストリートで操るのはかなり大変だ。」
Barraエンジンには6速 Tremec T56マニュアルギヤボックス(エンジンとミッション両方Ford BF F6 Typhoonから取った)と組み合わせられているが今のエンジン仕様には最適ではないとDennisは認める。特にドラッグレースには向いていないと言う。「素早くシフトされるのが苦手みたい。いずれはパワー出力にマッチングできる様なオートマミッションに変えるつもりだ。」
T56はカスタム直径4インチのプロペラーシャフトを3.9:1ギヤを使ったスタンダードR200リヤデフに繋げ、今のところは問題なく使えている。パワーアップされた4ポッドブレンンボブレーキシステムはMitsubishi Lancer Evo IXからだ。ストリート用のホイールは18×10.5インチCosmisホイールでドラッグレース用では、15×10 インチBelak鍛造スプリットホイールにドラッグラジアルタイヤを履いている。
MCA Race Red車高調整ダンパーでホイールとタイヤはGT-Rのフェンダー内に収まっている。
CHAPTER 4:Special Import
外から見ても相当な日産マニアじゃない限り、この車が生粋なGT-R ではないことが分からない。
Dennisは(とんでもない価格で)日本から本物のGT-Rリヤフェンダー、ドアシル、フロンウィング、ボンネットを手配した。そこでJohn Hoganは、Jsai Aeroサイドステップとフロントディフューザーを取り付け、Matthew Maestriに頼み美しいSolaris Metallic (BMW M5カラー)に塗られた。
この錯覚は内装にも続き、ハーフロールケージの間にR32 GT-Rシートがマウントされ、デジタルダッシュボードとS1シフターも使われている。
好き嫌いは当然あるが結果はとても満足できるパッケージだ。しかし、Dennisは批判の声を何も気にしていない。R32をできるだけは知らせることだけを考えていると言う。
GT-R Challengeはもちろん、XR32はWTACにも参加しており、今後も様々なイベントに出る予定だ。新しいギヤボックスを入れたらドラッグレースを優先するつもりだ。
Barraのエンジンスワップは、全員の納得を得られないかもしれないが、賛成派も十分いる。
Dennisは、今スープラにBarraを本気で載せ替えしたい客を商談中だという…
記事提供元
http://www.speedhunters.com/2019/07/swapping-sixes-the-barra-powered-skyline-r32/