なるか、ポルシェの富士連覇。そしてトヨタの巻き返しは?
ここのところ台風の不安定な行方によって、落ち着かない天候が続く日本列島。だが、秋の深まりとともに気分がぐっと盛り上がってくるレースイベントが間もなく始まろうとしている。それこそが、世界最強のスポーツカーレース、WEC・世界耐久選手権だ。10月14-16日、静岡・富士スピードウェイにて開催されるのは、シリーズ第7戦。今年は、ル・マン24時間レースで5号車のトヨタが悲願の優勝を目前に、まさかのマシントラブルでリタイヤに追い込まれたという劇的な一幕も見られたが、果たして富士ではどのような戦いを繰り広げるのだろうか。
■ホームサーキットでのトヨタの奮闘に注目
2015年、ディフェンディングチャンピオンとして新たな戦いに挑んだ日本のトヨタ。しかしシーズンが開幕すると、ライバル達の想像以上の躍進に遅れをとり、まさかの苦汁をなめることになってしまった。当然、2015年シーズン途中から、2016年の戦闘態勢の見直しを強いられ、さまざまなプロジェクトにおいて変更、前倒しに取り組むことになったと言われている。
マシンの大革新をもって挑んだ今シーズン。その名もTS040からTS050へとバージョンアップ。エンジンも2.4リッターV6直噴ツインターボへとスイッチした。さらにハイブリッドシステムも一新され、バッテリーもスーパーキャパシタからハイパワー型リチウムイオン電池方式に変更。まさに「新星」マシンが誕生した。あまりにも短過ぎる開発時間であったことから、シーズンが開幕してからも、まだ不安定な状態が見られるなど、ル・マンへ向けての不安も残ってはいた。しかし、チームではル・マンに照準を合せた準備を粛々と進めており、それが形になって現れたのが、ル・マンでの決戦におけるパフォーマンスだったのだ。
予選での速さよりも、決勝での強さを重視して進めてきたマシン開発。そしてそのとおりに決勝の幕が上がると、最強ライバルであるポルシェと互角の速さで戦いを繰り広げ、またル・マンならではの戦略を遂行し、5号車がレースをリードすることになる。そして終盤、ライバルとのマージンを確保し、トップでのチェッカーを目指して周回を続けていたところに、悲劇が訪れた。それは優勝を目前とした3分21秒前の出来事だった。一度止まった車両は、なんとか息を吹き返し、再び走行を始めたものの、レギュレーションによってレースを完走した扱いにはならず、大きな衝撃を持ってル・マンの戦いに幕を下ろすことになった。
ル・マンでの悔しさはル・マンでしか払拭することはできないであろう。特にル・マンで勝利が手からこぼれ落ちた5号車は今シーズンまだ一度も表彰台に上がってはいない。だが一方で6号車は確実な戦いを続けており、今シーズンこれまで6戦中4度表彰台に上がっている。加えてホームサーキットとなる富士は、日本でのWECが2012年にスタートしてから3連覇を飾っている相性のいい場所。今シーズンの大詰めを迎えるだけに、母国ラウンドでの雪辱戦となるのは言うまでもない。
■富士での連覇を狙うポルシェ、そしてアウディの逆襲は?
トヨタのライバルは、ポルシェとアウディ。言うまでもなく、シリーズ最上位クラスのLMP1でしのぎを削っているメーカーである。チャンピオンゼッケンをつけるポルシェは、今シーズン、マシンコンセプトを変更し、オールラウンドでパフォーマンスを発揮する強さを見せつけている。いわゆる速さと強さを兼ね備えたバランスのいいマシンとして仕上がっていることから、どのサーキットにおいても安定した強さを披露できていると言えるだろう。となれば、今回の富士においても“さすが王者”と言えるような走りをしかと見せつけてくるのではないだろうか。
一方のアウディ。トヨタ、そしてポルシェよりも先にル・マンに参戦し、2010年からは3年連続で表彰台を独占。さらに2014年まで5連覇を果たすなど、その大きな功績は近年のル・マンを語るにあたって外すことができないポイントだ。だが、2014年にポルシェが復帰を果たすと、翌年の15年にはポルシェに優勝をさらわれ、後塵を拝すことに。その後もポルシェ完勝が続き、その後をアウディが追う形が続いている。今季はマシンコンセプトを大幅に見直し、まるでフォーミュラカーかと思うようなフォルムのマシンをリリース。空力デザインの変更をはじめ、様々な要点を見直すことで、ライバルに一矢報いることになった。だが、シリーズ戦の結果を見る限り、まだポルシェ優位の感は拭えない。だが、富士戦は、チームドライバーがかつて日本でレースをしていたときに走り込んだサーキットが舞台となる。それをアドバンテージとして戦いたいところだ。
■サーキットでのイベントも充実
金曜日からスタートするWECのレースウィーク。実は、前日の木曜日からサーキットではチームやドライバーがレースウィークに向けての準備を進めていて、コースを歩いて体感する様子などを見ることができる。これこそ、年に一度のシリーズ戦ならではの風景と言えるだろう。また、金曜日には、1時間30分のフリー走行が2回実施される。トップクラスのLMP1はもちろんのこと、国内戦のSUPER GTとはひと味もふた味も異なるレース用GTマシン、LMGTEクラスの車両も見てみたい。
土曜日からはピットウォークが始まるのだが、決勝日となる日曜日の朝8時から1時間に渡ってピットウォークを実施! これもWECならではのお楽しみかもしれない。また、イベント広場での車両展示や搭乗体験、さらにはレーシングシミュレーターなど、どっぷりとWECを堪能できるイベントもたくさん用意されている。中でも、ドライバーズトークショーは必見だろう。
◎主なレーススケジュール
・10月15(土)
05:30 - ゲートオープン
10:00 – 11:00 WEC 公式練習3回目
12:15 – 13:00 WEC ピットウォーク(12:30 – 13:00 サイン会)
14:00 – 14:20 WEC 予選(LMGTE Pro & LMGTE Am)
14:30 – 14:50 WEC 予選(LMP1&LMP2)
・10月16日(日)
06:00 - パドックオープン
08:00 – 08:45 WEC ピットウォーク(8:10 – 8:40 サイン会)
10:15 – 10:30 WEC グリッドウォーク
10:53 WEC フォーメーションラップスタート
11:00 – 17:00 WEC 6Hours of Fuji 決勝レース(6時間)