伝統のル・マンから…
今年で開催84回目を迎えるル・マン24時間耐久レース。戦前から行われてきた伝統の一戦は、かつて偉大なる草レースとも言われていたが、今ではアウディ、ポルシェ、そして日本のトヨタが最新のテクノロジーを投入し、過酷な舞台から得た膨大なデータを市販車にフィードバックする場になっている。その一方で、フランス国内に留まらず、ヨーロッパ各地からも多くのレースファンがこぞって押しかける年に一度の大イベントであり、彼らが胸躍らせる“お祭り”でもある。今回は、その現場の様子の一部をお伝えする。
新たな歩みが次の歴史を作る
ピットビルディングにデカデカと貼られたバナーはレースイベントを主催するACO(フランス西部自動車クラブ)プロデュースもの。「伝統は継続される」というメッセージそのものがル・マンの存在を意味するとも言えるだろう。伝統を大事にする一方、イベントの情報発信には最新の手法を積極的に導入。ライブカメラ、携帯端末のアプリなど、世界中にいるル・マンファンがいち早くレースの情報をゲットできるように、とその歩みは留まることがない。この継続する力こそが、新たなる伝統を作る…、そんなメッセージのようだ。
晴れのち雨、雨のち…!?
フォードシケイン側から見たメインスタンド。今年のル・マンは天候変化が激しく、少し晴れ間が見えたかと思ったら、再び急激に雨雲が到来、まるで日本の梅雨みたく、しとしと雨をも降らすという実に先が読めない天気が続いている。
3度のセッションが行われた予選も、回数を重ねるごとに不安定さが増長され、ついにセッション3では、豪雨の中でコントロールを失った車両がスピンする様子は、まるで氷上を走っているかのようだった。
すべてにおいて安泰!? ポルシェの盤石ぶり
今年のポールポジションを獲得した2号車のポルシェ。予選セッション1回目にニール・ジャニがマークしたタイムが結果として今年のポールポジションになるという、珍しい展開となった。とはいえ、ポルシェの仕事ぶりを見る限り、このたびのポールポジションは獲るべくして獲ったものであり、ピット内で空力パーツ、足回りの調整などの細かな作業にじたばたしているライバルたちの様子と比較すれば、明らかにアドバンテージを持って戦っているのは明白と言っていいだろう。
ポルシェはホスピタリティもゴージャス!
パドックに設置されたポルシェのホスピタリティブース。チームスタッフに限らず、スポンサーやレース関係者にもアクセスを許可しており、食事時には前菜、メイン、そしてデザートに至るまでごらんのようなご馳走がズラリと並ぶ。中にはすっかりリラックスしてビールやワインを堪能する方々もおり、日本のサーキットではなかなかお目にかかれないような光景を目にすることができた。
トヨタ、今年は一貴、可夢偉の元F1ドライバーを擁す!
昨年のル・マンではポルシェ、アウディの後塵を拝したトヨタ。その悔しさをバネに今年は新たな車両、ハイブリッドシステムを搭載したTS050をリリースし、長丁場の戦いに向けて着々と準備を進めてきた。5号車のアンソニー・デビッドソン、セバスチャン・ブエミ、そして中嶋一貴という布陣に変わりはないが、今年の6号車はステファン・サラザン、マイク・コンウェイ、そして新たに小林可夢偉が加わり、日本のファンにとっては、願ってもないドライバーラインナップになったといえる。金曜日のプレスカンファレンス時には日本のBSテレビ取材を揃って受け、ともにリラックスした表情を見せていた。
(Text&Photos:Motoko SHIMAMURA)