2016年のル・マンは、トップ3の「進化」を比較せよ! 詳細ページ(10201) - イベント・レースレポート

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2016年のル・マンは、トップ3の「進化」を比較せよ!




日本列島がほぼ梅雨入りすることとなった6月上旬。日がすっかり長くなったヨーロッパでは様々なスポーツイベントが花盛り。フランスでは、サッカーのユーロカップも始まっているが、モータースポーツ好きであれば、いよいよ恒例の「お祭り」が気になるはず。そう、今年もフランスでのル・マン24時間レースが幕を開ける。すでに第一週目の日曜日にはテストデイが実施され、本戦に向けてのカウントダウンが始まったと言ってもいいだろう。世界の名だたる自動車メーカーが先陣を切って参戦し、その技術の進歩に合わせてレース規則も年々シビアになっているこの戦いで、今年はどんなドラマが生まれるのだろうか。

 

トヨタ、惨敗からの学び

一昨年、念願のゼッケン1を手にしたトヨタ。だが昨シーズンほど辛酸を舐める戦いはなかったのではないか。というのも、進化した車両で挑んだ戦いでは、ライバルのポルシェ、アウディの更なる進化に及ばず、ディフェンディングチャンピオンとして納得のいかないシーズンを過ごすことになったからだ。そこで首脳陣は2017年からを予定していた新車投入の前倒しを敢行。2年後の予定を1年後にするというのは、レース界においてかなりの荒技。だがしかし、ル・マンに限らず、今や世界耐久シリーズ(WEC)としてシーズンでの戦いを考慮すれば、それしか手段は残されていなかったとも言える。

結果、トヨタは新車「TS050 ハイブリッド」を誕生させ、新たに2.4リッター・V6直噴ターボエンジンというユニットの搭載を決行。またハイブリッドシステムとして、これまで使用してきたキャパシタ式の蓄電装置を廃止、代わりにリチウムイオン電池を採用した。これは、ル・マン24時間という長距離レースで戦う車両の進化としては、保守的な進歩ではなくかなりの革新と言っていい。昨年の惨敗で明白となった弱点を見直し、そこに手を加えるのではなく、新たなアプローチで今年の戦いに挑むことへの決意そのものに他ならない。一方、3.7リッター、V8のNAエンジンからコンパクトなターボエンジンへの変更については、ル・マンだけに限らず、WECというシリーズ戦で、特色をもつ各サーキットを戦うことを見据えたものととらえていいだろう。なんでもターボエンジンのメリットは、レース中の気温の変化やサーキット毎の特性にアジャストさせやすいこと。イギリスを皮切りに、ベルギー、フランス、ドイツを経てアメリカ大陸へ渡り、秋にはアジアへと遠征。最終的に11月のバーレーンまで世界を転戦する過酷な条件下で、より最適なエンジンとしての選択と考えられる。

新車両と新パワートレインでの戦いを迎えるチームには、今季から小林可夢偉がレギュラー参戦。ひと足先にWECデビューを果たしている中嶋一貴とは異なるコンビネーションでの出走だが、F1GP出身の日本人ドライバーがそれぞれの車両をドライブすることは、日本のモータースポーツファンにとって大きな楽しみにもなる。

 

アウディ、ハイノーズを採用、空力コンセプトを一新

ル・マンで多くの優勝をさらってきたアウディ。2010年から5連覇を達成し、アウディ王国を作り上げたが、昨年はついにポルシェの襲撃に遭い、6連覇達成の夢を阻止されてしまった。アウディはハイブリッドシステムを導入した2012年以来、ディーゼルエンジンを採用。そのパワーユニットは4リッターのV6直噴ターボエンジンであり、電動フライホイールとの組み合わせを継続していた。だが、エネルギーの放出量を4MJから6MJへと変更したことで、ついにリチウムイオンバッテリーへと移行。併せて大幅な空力コンセプトの変更に取り組んだ。結果、「16年型アウディ R18」は、フロント周りのデザインが大きく変わり、見た目からして新たなアイデア投入がはっきり伝わってくる。ハイノーズ化され、またスリムにもなった。これにより、ドライバーが座るコクピットについての見直しも行なうこととなり、着座位置が後方へとスライドされた。同時にマウントするエンジンそのもののサイズも見直され、新たな設計が施されることになり、コンパクトサイズへと生まれ変わった。

開幕戦のイギリスではトップでチェッカーを受けたが、その後、レギュレーション違反が問われ、残念ながら優勝は取り消されるという波乱のシーズン幕開けとなったが、その後は着実にステップアップを見せており、第2戦スパ・フランコルシャンでは8号車が優勝を果たすことに成功。ル・マンでのタイトル奪還を目指し、いい流れを構築しているといえるだろう。

 

ポルシェ、正常進化による体制強化で連覇へ脇固め

ル・マン復活2年目にして、昨シーズンの覇者となったポルシェ。白地ベースのカラーリングから黒地へと一新したことが、一番の変化と言ってもいいほど、ディフェンディングチャンピオンとして、着実な進歩を果たしているようだ。ライバルたちがパワーユニットやシステム面での変更を加える中、ポルシェは車両のコンセプトをキープ。より速く、より強い「ポルシェ919ハイブリッド」でル・マンの戦いに挑むこととなる。だが、キープという言葉は、当然のことながら「何もしない」わけではなく、今年の戦いにおいて何をすべきか、を熟慮した上で着々と準備を進めているのは当然のこと。関係者の言葉を借りれば、「ゼロから開発をスタートさせている」らしく、去年の戦いで得たライバルとのアドバンテージをさらに広げるべく、進化を続けているということになるだろう。

結果、モノコックは現状キープながら足回りや空力パッケージの見直しを重ねることでよりタフなクルマ作りを実行。ル・マンは耐久レースとはいえ、近年はスプリントレースに負けじと劣らぬ戦いになっているため、ピットでの余分な作業があとあと勝敗を分ける命取りの行為になり兼ねない。それだけに、些細なトラブルさえも事前にシューティングすることで、完成度を高めることが求められる。王者・ポルシェならではのアプローチもあるはずだ。

今年、84回目の大会を迎える伝統のレース。まずは、12・13日の両日に公開車検を実施。夜間セッションでのタイムアタックを含む予選は、15・16日の2日間。市内のパレードで場の空気が一気に盛り上がる17日を経て、土曜日18日の午後3時(現地時間・日本時間は同日午後10時)に号砲を迎える。なお、今年はスタートセレモニーを俳優のブラッド・ピットが担当することがアナウンスされている。王者・ポルシェを軸に、ライバル達の戦略、そしてアプローチに注目だ。

 

(Text&Photos:Motoko SHIMAMURA)










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