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コラム
(2026/06/18)バスやタクシーなど、運転手の確保が難しいと言われる昨今。国土交通省では「第3次交通政策基本計画」において、2030年度までに運転手を必要としない「レベル4」の自動運転車両の普及台数を、1万台とする目標を掲げている。その一方、実証運行を進める各地域においては、課題も少なくなく、いまだ正式な運行開始に至っていないようだ。導入を推進する国交省の補助金を活用し、実用化を目指しす各自治体や企業の進捗はいかに!?
・福井県の自治体は実験を休止
福井・越前市では、2024年度に市中心部の約1kmを周回するルートで、自動運転を運行。この時点では、運転手が必要に応じてステアリングを握るレベル2での運行だった。年度ごとに走行距離を伸ばし、28年度までに、一定の条件下でレベル4での運転を可能にする目算を立てていた。この取り組みには国交省からの補助金を充てていたが、今年度に国交省が打ち出した「27年度末までに全区間でレベル4を実現する」という補助の条件が重くのしかかることになる。未達成の場合、補助金を一部返還しなければならなくなったのだ。この方針を受け、越前市では「期限までに間に合わない」と、6月上旬の市議会で実証実験の休止を表明する決断をした。
これを受けてか、同県内の坂井市も利用者の要望に応じて運行する「オンデマンド型」の自動運転タクシーの実証実験を休止すると発表。はやり経費の8割を国からの補助金で実施していたようだ。また、永平寺のある永平寺町では、運転手が不要の電動カートを町道で走らせており、こちらもレベル4での運行を成功したことがメディアで報じられていたが、実は今年4月に運行を休止していた。実験の継続が難しいからではなく、使用するカートの開発企業が事業から撤退したことが原因だという。
レベル4運転の実現を加速させるために補助要件を厳格化したことで、実証実験を断念する自治体が出ていることは極めて残念だが、実験を行なう自治体によっては、走行距離が僅かで成果を出せていない例も散見されたとのこと。湯水のごとく補助金を使い、遅々として進まない実験はお断り、ということか。だが、自動運転に詳しい専門家の意見としては、あと1年半でレベル4を実現できる自治体は限られるとのこと。先細りを懸念し、実証実験に取り組んできたものの、目標達成が果たせずに補助金を返還することになれば、財政がより厳しい状況へと追いやられるため、撤退せざるを得ないのが現状のようだ。
・伊予鉄は導入を先送り
先月下旬、JR東日本が宮城県の気仙沼線BRTでレベル4で運行するバスをメディアに公開した。BRTとは「バス高速輸送システム」であり、専用の道路や優先レーンを走行するため、優れた定時制を担保できるものだ。気仙沼線BRTは、東日本大震災で被災した鉄道路線を復旧するために導入されたものでもある。もともと鉄道が走っていた敷地をバス専用道として整備しているため、一般の車両は同じ場所を走行しない。
ここではレベル4のバスとして最も速い時速60kmでの走行を実現している。報道陣に公開されたときは、安全のために運転手が運転席に乗っていたが、ステアリングを握ることはなかった。試乗会は今も継続して行なわれており、7月4日までの毎週金、土曜日に行なうとしている。時速60kmも最速だが、走行距離もおよそ15.5kmと最長レベルだという。一般道ではなくBRTというバス専用の高速レーンで安全が確保できる場所でのレベル4での走行が実用化されることが、まずは急がれるのではないだろうか。
実のところ、2024年12月から全国初の「自動運転レベル4路線バス運行」を開始した愛媛県松山市の伊予鉄バスでは、運行を再延期する事態となっている。もともと、全国的にバス運転手が不足するなか、同社においても安定してバス運行を続けていくために必要な人員よりも10%程度足りていなかったことから、導入を検討。自動運転に関する事業を展開する企業と協業して、自動運転車両を活用した路線バスの運行計画を進める決断をした。伊予鉄道高浜駅から松山観光港間の約800mの距離を1日に66便走るルートでの導入を目指し、当面は大型2種免許を保持した乗務員1名が同乗。加えて、営業所で遠隔監視を行ないながらの運行を開始した。
これに加え、今年1月からは松山環状線(1周7.4キロメートル)、2月から道後・松山城線(片道2キロメートル)において運転席無人のレベル4での運行を表明していた。座席数は11席の小型EVバスにカメラ13個、LiDAR(ライダー、レーザースキャナー)を5基搭載し、最高時速40km、航続距離は約200kmを打ち出していた。しかし、結果としては両ルートでの導入を再延期。システムの最終調整に想定以上の時間がかかっている、というのが同社による説明だ。実現していれば、運転席を配置しないレベル4での実用化として全国初の取り組みになったのだが、惜しむらくは現時点で運行開始時期を「未定」としていること。BRTや高速道路ではなく、既存道路、路線での運行ゆえに安全の確保を踏まえ、慎重な検討を重ねることが求められるのかもしれない。