まず、新型Zに乗って気づいたことは、シートの座面がZ33より小ぶりになったことです。実際に座ってみると、座面の先端が膝のちょうど後ろぐらいで切れてしまいます。その結果、ドライバーの負担が大きくなり、長距離ドライブで疲れやすくなったり、お尻が痛くならないか心配です。何らかの意図があるのかも知れませんが“どうして小さくなってしまったの?”と、疑問を感じる部分です。たとえスポーツカーであっても、理想的には“腰からふくらはぎ”まで、しっかりサポートして欲しいですからね。
エンジンは、スカイラインクーペと同じVQ37VHRが搭載されています。このクラスのエンジンとしては十分すぎるぐらいパワフルで、先代のZ33に比べてトルク感が増した印象です。アクセルを踏み込むだけで気持ちよい加速が得られます。しかし、4000rpm以上の排気音が静かなんですよね。高回転域は排気音よりエンジン内部のメカニカルノイズの方が大きく、結果的に高揚した気分がスポイルされてしまいます。僕だったら、マフラーをスポーツタイプに交換して“気持ちよい排気音”を楽しみたいですね。
Z34の目玉機能である“シンクロレブ”は、正直、その完成度の高さに驚かされました。メカニズム的には、素早いシフトダウンに欠かせないヒール&トゥの“かかとでアクセルペダルを煽る動作”をクルマが自動的におこなってくれる補助機能です。実際に試してみると、このタイミングが“絶妙”なんですよ。意地悪なシフトダウンや、ラフなクラッチ操作を試してみましたがクルマがギクシャクしません!
ヒール&トゥというのは、クルマ好きなら誰もが知ってる超定番のテクニックですよね。しかし、完璧にマスターしている人はほんの一握りにすぎません。多くの人がエンジンの回転調整に気を取られ、ブレーキングが甘くなっていることがほとんどなんです。しかし、この機能を活用すれば、ドライバーはブレーキングのみに集中でき、結果的に速く走ることが可能になります。4速から2速へシフトダウンする時、意図的に3速を飛ばしてみましたが、しっかり回転が合いました。“レース”でも使ってみたい完成度が高いシステムですね。また、街中の低回転域でエンジン回転を正確に合わせる作業は、プロでも難しく“半クラ”を多用しますが、シンクロレブはその領域においても正確な動作を約束します。渋滞区間の煩わしさから開放してくれる画期的なシステムですね。
走りの印象は“ボディがひとまわり小さくなったスカイライン”といった感じです。車格の割には重量感はあります。しかし、ステアリングを切ったら切った分だけ正確に応答します。ワインディングを走行すると、先代に比べてホイールベースが短くなった分、クルマにキビキビ感が増しました。ステアリングの応答性が良く、オンザレール感覚で気持ちよく走ることができます。リヤタイヤのグリップ力が限界を超えた時、シビアな挙動を示し“クルマが重いな!”と感じるでしょうが、Zを振り回して乗る
人は皆無だと思いますからとくに問題ないでしょう。タイヤグリップの80%の領域においては、ノーマルサスのままでも質の高い走りを体感できます。
乗り心地についても申し分ない出来映えです。路面のギャップを乗り越えた時の不快な突き上げもなく、GT-Rに比べたら遙かにマイルドです。だから僕の中では“コンパクトなスカイライン”なんです。
前代のZ33よりも明らかに劣っている部分は、基本的に無いと思いますよ。動力性能、ハンドリング、デザイン、質感のすべてが正常進化しています。あえて言うなら、エクステリアデザインについては好みが分かれるかも知れません…。個人的には、Z33が好きですし、Z32は今見ても洗練されていると思います。Z34は、ワイドトレッドでホイールベースが短く、どうしてもデフォルメされた印象なんです。
進化を感じさせる部分はインテリアですね。基本的なデザインはZ33と大差ありませんが、各部の作り込みや演出の仕方が凝っています。Z33は何もない無骨な印象で、それが特徴でしたが、Z34はデザインや質感が相当アップしています。ただし、デジタルとアナログの調和が不完全な印象です。電圧計がタコメーターのようなデジタル表示なんですが、もっとアバウトでもイイと思います。水温計や燃料計がデジタル表示ですが、そういうのは別にアナログ的でも良かったと思います。あくまでも個人的な印象です。総合的には、Z33よりも完成度が増していると思います。
スポーツカーを謳っているのに“テレスコピック機能”が省かれているところは頂けませんね。スポーツドライビングに適切なドライピングポジションは不可欠ですよね? 適切なシートポジションに合わすとステアリングが遠くなり、結果的にシートの背もたれを起こさなくてはなりません。これは、Z33時代から共通する不満点であり、ぜひとも改善してほしいですね。
Z33から改善された点は、トランクにあるタワーバーの小さくなったことです。Z33オーナーの方なら、トランクに荷物を置くことがどれだけ大変なことかお判りですよね。大きな荷物を載せやすくなったと思います。
スポーツカー不毛の時代にZ34のような大排気量FR車が発売されたことが自体が素晴らしいことです。ハイテク満載で究極の速さを目指したGT-Rに対し、Z34は“操る楽しさ”を追求したクルマだと思います。新開発されたシンクロレブ機能は、試してみる価値十分だと思います。その完成度の高さにきっと驚くことでしょう!
GTドライバー 青木孝行選手


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